2020年上期後半に人事評価制度の運用担当になり、2020年下期からは運用に加え改善担当にもなったということで、改めて人事評価の全体像を学び直そうと思い、書籍を購入しました。
を読了したので、要点をまとめます。
なお、社会人経験をふりかえると、人事評価制度の被評価者として人事評価制度を意識するような組織に所属した経験がなく、人事になって初めて向き合っている状態です。特に下請け受託戦士時代は評価制度も評価面談もないような世界観でした。
人事評価制度
人事評価の目的
- 処遇の格差をつける根拠とする
- 育成ポイントを明確にする
書籍に含まれていない目的を追加するとしたら、事業の特性や Mission / Vision を踏まえてどのような人が所属する組織にしていきたいか、の羅針盤にするという点ですかね。
※目的の章で明記はされていないが、評価制度作成プロセスの中では類似の概念は語られている
人事評価の5原則
- 公正な評価
- 評価基準の明確化
- 評価基準の理解
- 評価基準の遵守
- 評価責任の自覚
人事評価(人事考課)の基礎知識 - 人事評価の原則|人事のための課題解決サイト|jin-jour(ジンジュール)
概ね言葉の通りで、補足がいるとしたら「評価責任の自覚」かなと思います。
評価者は被評価者の育成責任を負っているという自覚が必要、という話です。
人事評価のプロセス
よくあるのは以下のような流れ。
- 目標設定
- 職務遂行
- 自己評価
- 一次評価
- 二次評価
- 最終評価
- フィードバック面談
この流れの中の質が重要になる。
人事評価者の体系と調整
評価に関わる人がどのような役割を持つか。
典型例
- 一次評価者 - 課長など直属の上司
- 二次評価者 - 部長
- 一次評価者の誤評価チェック
- 一次評価者の甘辛調整
- 最終評価者 - 担当役員
- 二次評価者の甘辛調整
人事評価要素群
人事評価要素は人事評価のカテゴリです。「成果評価」「能力評価」「情意評価」があります。更に分けると以下のようになります。
- 人事評価要素群
- 成果評価 - 成果に対する評価
- 業績評価 - 最終的な業績に関わる成果に対する評価
- 活動実績評価 - 業績に影響を与える活動成果に対する評価
- 能力評価 - 能力に対する評価
- 知識評価 - 職務の遂行に必要となる知識に対する評価
- 習熟能力評価 - 職務の遂行に必要となるスキルに対する評価
- 情意評価 - 態度、意欲などに対する評価。バリュー行動に対する評価もここにあたる
- 成果評価 - 成果に対する評価
評価要素は事業の特性や Mission / Vision を元にした目指す方向性を踏まえた独自性があることが好ましい。組織の人材は競合との差別化の要であり、評価軸が何であるかはそこへの影響が大きい、ということでしょう。
能力評価に関する補足として、以下のような概念もある。
私は人事未経験で採用されていますが、これは人事における顕在能力はないが、潜在能力を見込まれて採用されたと言えそうです。
人事評価尺度基準
いわゆる評価基準と評点をどう扱うか、という部分です。
- 共通基準 - 全社共通の評価尺度
- 個別基準 - 各現場で部門や職種の特性を踏まえた評価尺度
まずは全社共通での抽象度の高い評価基準および、それに対応する評価基準を作成する。
その上で、個別の現場で個別基準をつくり職務に応じた個別メンバーが理解・腹落ちできる粒度の内容に落とし込む。
評価制度の設計手順
ここはこの書籍の独自性があるところで、事業のコアプロセスを見極め、それを強化するような評価制度を作るという点です。コアプロセスはその組織が様々な役割のチームをまたぎつつどのようなプロセスで事業の価値を生み出しているか、というものになります。
- 経営ビジョン・事業戦略の確認
- コアプロセスの明確化
- 人事評価要素の設計
- 人事評価基準の設計
- 評価社体系の設計
- 人事評価結果の処遇への反映の仕組み化
ざっとこの話を見て思った難しいところは、コアプロセスには様々な部門・職種が存在し、そこに求められる特性は全社共通のものと部門・職種固有のものがあり、そのときに必要となる人事評価尺度基準のうち、共通基準以外の個別基準側の論点が多くなりそうで、制度設計の初期フェーズとしてはけっこう難しそう、というお気持ちでした。あくまで最初は共通側の要素を抽出するのかな。
評価フィードバック
評価フィードバックのプロセス例。
- アイスブレーク
- 評価結果と理由の説明
- 本人の受け止め方を傾聴
- 認識合致 or 相違点の確認と相違点に関する認識合わせおよび評価者からの説明
- 今後の方向性の確認
- 今後の期待を伝える
評価制度の目的に立ち返り、評価フィードバックは処遇の決定事項への納得感を作りつつ、育成効果を高める、ということを踏まえての上記のプロセスでしょう。そのうえで、実際にここまでやろうとすると各メンバーへの普段からのすり合わせが必要であり、 スパン・オブ・コントロール において管理対象のメンバー数を7名以下など一定範囲に抑える必要性を改めて感じるところです。
まとめ
大きなポイントに絞りざっと内容をまとめました。実際の書籍では事例や評価制度の歴史、評価関連で用いる記入フォーマットのサンプルなどより踏み込んだ内容を細かに解説してくれているので、気になる方は書籍をご確認ください。
実際に評価制度の運用・改善担当をしてみて思うのは、
- 評価基準の明確化の重要さ
- 評価基準の理解促進の難しさ
です。
評価の基準が明確でなくてはすり合わせは困難になります。とはいえ、具体化しすぎると個別ケースや時代の変化に対応できなくなるため「良い塩梅」が必要です。
また、評価制度に関する理解促進も、説明会を開いて、一度伝えて、ドキュメントにも残し、ポータルサイトから辿れるようにしたからといって全員が即把握し、誤認識が発生しないわけではありません。このあたりは運用課題として改善施策の検討が必要なところです。