Tbpgr Blog

Organization Development Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

3階層のマネジメントレイヤー

会社における組織のマネジメントについて、大きく分けると3階層あります。
この記事では、マネジメントの3階層について、その役割や業務について整理します。

3階層のマネジメントレイヤー

マネジメントレイヤーは以下のような三階層に分類されます。

トップマネージャー

項目 内容
役割 組織全体の方向性の決定、戦略の策定、目標の設定、主要な資源の配分、そして組織の外部環境への対応(株主、政府、地域社会など)に責任を持ちます。
・CEO (最高経営責任者)
・COO (最高執行責任者)
CFO (最高財務責任者)

ドルマネージャ

項目 内容
役割 トップマネージャーが定めた戦略を具体的な行動計画に落とし込み、配下のファーストラインマネージャーや部門に伝達・実行させます。部門間の調整や、トップと現場をつなぐコミュニケーションの橋渡し役を担います。
・事業部長
・部長
・課長
・室長

ドルマネージャー特有の業務

ドルマネージャー特有の業務を4例紹介します。

1. 経営戦略の「翻訳」と「実行計画への落とし込み」

経営層が「来期は市場シェアを20%拡大する」という抽象的な戦略を打ち出したとき、それを「当部門では新製品Aの売上を〇〇地域で〇〇件獲得する」「そのためにメンバーの教育を〇〇時間実施する」といった、現場が具体的な行動に移せるレベルの計画やKPIに分解・設定します。

トップマネジメントは戦略を策定しますが、詳細な実行計画は立てません。ファーストラインマネージャーは現場のタスクを管理しますが、部門全体の戦略策定は行いません。この「戦略と実行の間の橋渡し」こそがミドルマネージャーの核となる機能です。

2. 部門間の利害調整とリソース配分

自部門が目標を達成するために、他部門(例:開発部門、営業部門、人事部門など)との間で、人員、予算、技術、時間といったリソースの交渉や調整を行います。「このプロジェクトに開発部門の専門家を週2回アサインしてほしい」「営業部門からの情報提供を毎月定例化したい」といった部門横断的な課題を解決します。

トップマネジメントは会社全体のリソース配分を決めますが、日常的な部門間の細かな利害調整は行いません。ファーストラインマネージャーは自チームの業務が中心で、他部門との広範囲な調整は役割外です。

3. 経営層への「現場の現実」のフィードバックと提言

現場のマネージャーやメンバーから集めた情報(例:顧客からの生の声、競合製品の具体的な強み、現場の業務プロセス上の非効率な点、従業員のモチベーション低下の兆候)を構造化・分析し、「このままでは経営目標の達成は困難である」という現場の現実を、論理的なデータや具体的な事例と共に経営層に提言します。

経営層は現場の詳細を直接把握できません。現場管理者層は情報を知っていますが、それを戦略的な提言に昇華する役割は持ちません。ミドルマネージャーは、この「現場の情報」を「経営的な示唆」に変えるフィルターの役割を果たします。

4. ファーストラインマネージャーの能力開発とコーチン

現場のファーストラインマネージャーの業務遂行能力を評価し、彼らが監督者としてのスキル(例:メンバーへの適切なフィードバック、業務計画の立案、モチベーション管理など)を向上させるためのコーチングやメンタリングを継続的に行います。また、ファーストラインマネージャーから上がってきた現場の問題解決を支援したり、権限委譲を行ったりします。

トップマネジメントは次世代の経営層育成に注力します。一方で、ミドルマネージャーは組織の現場の指揮官であるファーストラインマネージャーを育てることで、部門全体のパフォーマンスと持続可能性を担保します。これは、戦略の実行力を高めるための「人」への投資であり、ミドルマネジメントの役割の中でも特に人材開発に特化した機能です。

ファーストラインマネージャー

項目 内容
役割 日々の業務の直接的な監督、現場のメンバー(非管理職の従業員)への指示・指導、タスクの割り振り、スケジュールの管理、そしてメンバーのモチベーション維持や育成に直接的に関わります。
・監督者
・グループマネージャー
・チームリーダー

ファーストラインマネージャー特有の業務

ファーストラインマネージャー特有の業務を3例紹介します。

1. 日々のタスクの割り当てと進捗のマネジメント

メンバーのスキル、経験、負荷を正確に把握した上で、「AさんがタスクXを完了し、Bさんがそのレビューを行う」といったように、具体的な作業を個人レベルで割り振り、短時間のサイクルで進捗を逐一チェックし、遅延があればその場で介入・調整を行います。

なお、開発部門の場合、部門やチームのマネジメントとプロジェクトやプロダクトのマネジメントを担ったり、分担することもあります。

ドルマネージャーは事業部や部門レベルの計画を管理しますが、個々の従業員のタスク管理はしません。この「現場のタスクを時間軸で管理し、確実に実行させる」業務は、ファーストラインマネージャーが行います。

2. OJT(On-the-Job Training)と技術的な指導

新しいメンバーに対し、具体的な業務をマンツーマンで教えたり、ベテランメンバーの作業を横で見せて技術を伝授したりします。また、業務上の問題が発生した場合、その場で技術的な解決策を提示したり、適切なツールやリソースの利用方法を教えたりするなど、現場の「先生」としての役割を担います。

ドルマネージャーは研修計画や能力開発の方針を立てますが、現場で手を動かしながら教えることはありません。この「現場の技術・知識を直接的に教え込む」業務は、現場で最も実務に精通しているファーストラインマネージャー特有のものです。

3. 従業員の日々のモチベーションと規律の維持

メンバーの士気やコンディションを最も近くで観察し、仕事の成果に対する即時のフィードバックや承認、励ましを行います。また、職場のルールや安全基準、勤務時間といった現場の規律を維持します。メンバー間の小さな衝突があれば、それが大きくなる前に仲裁し、チームの雰囲気を良好に保つ役割も担います。

経営層やミドルマネージャーは全体的な人事制度や企業文化に関わりますが、個々のメンバーの「今日」の気持ちや行動に直接影響を与えるのはファーストラインマネージャーです。これは、メンバーと物理的・時間的に最も密接に関わっている階層ならではの業務です。

イレギュラーについて

典型的な分類として3層のマネジメントを紹介しました。一方で、実施の組織においてはイレギュラーもあります。

小規模部門のマネージャー

小規模部門のマネージャーを担当する場合、ミドルマネージャーとファーストラインマネージャーの両方の役割が必要になります。

そのためありがちなのが、『新任の小規模部門のマネージャー』が発生することです。 通常、ファーストラインマネージャーを経験してからミドルマネージャーになりますが、小規模部門の場合、メンバーからいきなりミドルマネージャーに就任することがあります。
この場合、マネージャーとしてのオンボーディングの難易度が高まるため、シニアなミドルマネージャーをコーチにつけることや、就任前に少しずつミドルマネージャー相当の業務を細かく権限委譲しながら慣らすなどのアプローチが必要でしょう。

マネジメント不全について

すべての階層で、マネジメント能力に優れたマネージャーが配置されているとは限りません。

場合によっては、ファーストラインマネージャーの上司がマネジメント不全に陥っている場合もあります。
この場合、育成支援を受けれないどころか、本来は上である程度整理されて展開されてくるはずの方針や情報が不十分になる可能性があります。 ここはファーストラインマネージャー次第では、チャンスにもピンチにもなりえます。意欲・実力ともにあれば、本来もうしばらく経験しないと経験できないはずのミドルマネージャー相当の業務を代わりに実施するチャンスです。逆に、そうではない場合は斜めの関係のマネージャーや人事に助力を得なければ苦しい状況になります。

仮にこの記事を読んでいる人がマネージャーではなく、メンバーであり、マネージャーが階層に応じた責務を果たすことができていないことがわかったとして、非難していても物事は変わらないため、今いる関係者で一歩でも改善するために何をできるか検討する必要があります。

シェアードリーダーシップ

マネジメント不全では無く、意図的にマネジメントやリーダーシップの業務を分散する仕事の場合もあります。リーダーシップをチームで共有する。シェアードリーダーシップです。

状況に応じたリーダーシップ

たとえば、同じ粒度の責任範囲のファーストラインマネージャーだったとしても、メンバーのスキルレベルや社歴など、状況によってマネジメントやリーダーシップを切り替える必要があります。

関連情報