全社で実施する組織施策の成功のためには
- 経営
- 人事
- 各部のマネージャー
- 各部のメンバー
など関係者全体が協力しあってはじめて成功の前提が揃います。 今回はその構造について整理します。
進行上の制約
全社の施策にはできるだけ全員の意見が反映されるのが好ましい、と考える方もいるかも知れません。
一方で、そうも行かない事情があります。
その事情には以下のようなものがあります。
- 議論コスト
- 曖昧さ耐性
- 全体視点
進行上の制約 - 議論コスト
何かの方針を決める議論は、参加人数が多ければ多いほどコミュニケーションコストが大きくなります。
- 4人 - コミュニケーションパス6本
- 5人 - コミュニケーションパス10本
- 6人 - コミュニケーションパス15本
人数が増えれば増えるほど、意思決定のスピードは落ちます。
そのため、施策の基本的な方針を決めるまではある程度少人数での議論が好ましいでしょう。
逆に毎回ほぼ全員が参加するような進め方だと、何かを決めるために過剰に時間がかかりすぎる「適応速度の遅い組織」になってしまいます。
進行上の制約 - 曖昧さ耐性
全社に関わる施策の方針検討に関わる人には、曖昧さ耐性が求められます。
"曖昧さ耐性"を科学する:人や組織を変えるために(セミナーレポート) | ビジネスリサーチラボ
曖昧さ耐性を持つ人は、曖昧な状態に対してポジティブに捉えることができます。
全社に関わる施策の方針検討段階は、詳細まで入り込まないため、曖昧さを含む議論になります。 このタイミングで詳細レベルが気になって、個別具体ケースの議論を広げているといつまで経っても話が着地しません。
そのため、方針検討に関わるのはある程度抽象度の高いままの議論に参加できる人が求められます。 結果的に経営+人事+一部のマネージャーが適任になるわけです。
進行上の制約 - 全体視点
全社に関わる施策の検討には、全体視点が求められます。
全体に関する業務に関わったことがない場合、視点がついつい「自分の部門」や「自分個人」の発想に閉じがちです。
結果として、その案だと全体の施策としては不都合がでる場合があります。
そのため、全社施策の検討に関わる人には「自分の部門」や「自分個人」だけにとらわれない全体視点が求められるのです。
運用上の懸念
進行の制約を踏まえると現場のメンバー層の関与は最小になりがちです。 一方で、現場の事情を加味した運用を実現するためには現場のメンバーの力も必要になります。
運用上の懸念 - 現場視点
施策の検討が概案から詳細に入った際に、現場の目線が必要になります。
経営陣や人事部門は現場の個別詳細な業務に直接関わっているわけではないため、どうしても現場の現実に対する理解が不足しがちです。
そのため、例えば、全社施策の終盤において詳細を詰めるタイミングで、現場で実際に施策の利用者となる一部のマネージャーとメンバーたちからのフィードバックを得る必要があるでしょう。
運用上の懸念 - 運用不備の発見
全社施策を導入後、想定通りにうまく行かない部分があったとき、現場からのフィードバックが必要になります。
逆に、ここでフィードバックを得られないと、問題が発生しているのかどうか把握できないままになります。 結果として、仮にうまくいっていない場合に、そのままうまくいかないままになってしまいます。
各自に求められる役割
経営
- 概案段階の内容を人事、一部のマネージャーとともに検討する
人事
- 概案段階の内容を経営陣、一部のマネージャーとともに検討する
- 一部のマネージャーとともに詳細を検討する
- マネージャーに全社施策の導入説明をする
施策に深く関わるマネージャー
- 概案段階の内容を経営陣、人事とともに検討する
その他のマネージャー
- 概案段階の内容をレビューする
- 詳細段階の内容をマネージャーがレビューする
- 全社施策を現場で活用する
- 運用開始後にマネージャー目線でフィードバックをする
施策に深く関わる現場メンバー
- 詳細段階の内容をメンバーの一部がレビューする
現場メンバー
- 運用開始後にメンバー目線でフィードバックをする
全体像
アンチパターン
現場不在の施策設計、導入、改善
経営、人事のみでほぼ全体を進行して、現場のマネージャー・メンバー視点での施策検討が行われないケースです。
実運用に入ってからも、現場目線での問題点があちこちで愚痴として飛び交っているが、誰も運営にフィードバックしない状態です。 フィードバックされない問題点は運営からは把握できません。そのため、問題点が残ったままの制度運用になってしまいます。
現場の過剰介入
現場のマネージャー、メンバーが施策の初期検討の段階から過剰に参加するケースです。
個別の現場特有の事情がバラバラに施策に織り込まれ、全員にとって必要な内容以外のものが紛れ込んだ施策になってしまいます。 また、関係者の多さから施策の開始までの期間が想定より多くかかることになります。
まとめ
全社で実施する組織施策の成功のために、関係者がどのように関わっていく必要があるかをまとめました。