入社後に「思っていたのと違う」という出来事が発生し、早期のうちに退職に至る。
そういった出来事が多かれ少なかれ様々な会社にあるのでは無いでしょうか。
こういった「思っていたのと違う」という状況はなぜ発生するのか?
また、どのように対策をすればよいのか?
これらについてまとめます。
「思っていたのと違う」はなぜ起こるか?
退職に至るような「思っていたのと違う」はなぜ起こるのでしょうか?
まず、「思っていたのと違う」という状態は
- 入社者が思い描く入社、定着に関わるような重要な期待
- 入社者が入社後に体験した現実
が異なった状態です。
問題の発生パターン
「入社者が所属企業に対して持っている入社、定着に関わるような重要な期待」だと長いので仮に「重要な期待」と表記します。
この「重要な期待」が現実とずれるパターンは以下のようなものがあります。
- A 入社者が持つ「重要な期待」を受け入れ企業が選考段階で把握していない
- B 入社者が持つ「重要な期待」を受け入れ企業が配属過程で引きついでいない
- C 入社者が持つ「重要な期待」を受け入れ企業が把握しているが、満たせないのを承知で採用している
- D 入社者が持つ「重要な期待」を受け入れ企業が把握しているが、満たすための動きをしていない
A. 「重要な期待」を選考段階で把握していない
選考過程で入社者が持つ「重要な期待」を確認していないケースです。
選考は「選ぶ活動」だけではなく、「選ばれる」活動でもあります。
また、採用は入社が決まれば成功というわけではありません。成功後、定着し、活躍してもらえてはじめて成功です。
これらを踏まえると、本人が転職に際して持っていた「重要な期待」の確認は必須です。
B. 「重要な期待」を受け入れ企業が配属過程で引きついでいない
選考過程で入社者が持つ「重要な期待」を確認しているが、選考担当と入社後の上司が異なり、「重要な期待」が引き継がれていないケースです。
採用活動が一連にならず、部分最適していたり、引き継ぎの余力がないほど選考流量が多すぎると発生しやすい現象です。
C. 「重要な期待」を受け入れ企業が把握しているが、満たせないのを承知で採用している
選考過程で入社者が持つ「重要な期待」を確認しているが、その要望を満たせないのを知りつつ、内定受諾を獲得するために満たせると伝えてしまうケースです。
D. 「重要な期待」を受け入れ企業が把握しているが、満たすための動きをしていない
選考過程で入社者が持つ「重要な期待」を確認し、入社時に受け入れ上司に情報が引き継がれているが、上司が「重要な期待」を満たすためのコミュニケーションをしていない場合です。
コミュニケーションをしない理由は
- 「重要な期待」を満たすためのコミュニケーションが重要という認識がない
- 「重要な期待」を満たすためのコミュニケーションが重要だと分かっているが、多忙で定期的な確認ができない
のどちらかになるでしょう。
問題の解決策
事後対応
社員から「思っていたのと違う」というアラートが発信され、問題が発生した場合どうするか?
状況によって取りうる選択肢は変わりますが、
- 社員の期待を改めて確認する
- それが社員として妥当な期待の場合
- 制約の範囲内で最大限満たすためのコミュニケーションをとる
- それが社員として妥当ではない期待の場合
- その期待を満たすことが難しいことを誠実に説明する
になります。なお、こういった対応が発生した場合に重要になるのが上司との信頼関係の度合いです。
こういった、ネガティブな出来事に対して挽回を可能にするのは信頼関係が欠かせません。
なお、「それが社員として妥当ではない期待の場合」について補足すると、そもそも入社~問題が発覚するまで社員が持つ「重要な期待」を確認していなかった場合、その期待の内容が普通の企業では満たすことができないような多大な期待の場合がありえます。例えば社員に対して無制限に育成支援の予算をつぎ込むような期待を持っていた場合、それを満たすことはできません。
予防
一方で、こういった問題は発生前に防ぐことが理想です。予防策としては以下のようなものがあります。
- 採用広報段階
- 誇大広告をせず、等身大の発信をする
- 選考段階
- アトラクトする場合に、誇大広告をせず、等身大で伝える
- 候補者さんが持つ「重要な期待」を確実に聞き出す
- 候補者さんが持つ「重要な期待」を確実に後続の選考関係者に引き継ぐ
- 入社受け入れ段階
- 採用関係者から受け入れ上司に「重要な期待」を確実に引き継ぐ
- 部門でのオンボーディング時に改めて入社時点の入社者の期待をすり合わせる
- 入社受け入れ後
- 入社後、一定の期間で経過確認アンケート、インタビューを実施する / 人事など第三者部門からの実施
- 入社後、定期的な1on1で本人が持つ「重要な期待」とその充足状況を常に確認する / 上司による実施
対応できないケース
なお、「問題の発生パターン」には記載していなかったパターンとして、対応が難しいパターンがあります。
それは企業の方針が入社後に変化してしまったケースです。
企業は変化します。市場の前提の変化。企業内で起こった問題に対する対策。売上低下による社員向け施策の縮小。etc...。 特に期待を裏切る意図を持っていなくても、期待を裏切る形になってしまうことはあり、これ自体はやむを得ないケースです。
この場合は社員目線だと、
- 期待とズレてしまったが、それでも所属し続けたいと思える魅力がある
- 期待とズレてまで残る理由がない
などの判断をしていくことになります。
まとめ
入社後の「思っていたのと違う」とその対策についてまとめました。
社員は人であり、人はそれぞれの期待を持って働いているという前提を踏まえれば当たり前の話なのですが、意外と軽視されているケースが多いかもしれません。 企業は、採用広報・選考活動を通して期待が課題にならないように発信し、選考~入社のプロセス全体を通して常に期待を把握し続ける仕組みを整えることが大事です。
逆に、どんな企業でも到底満たせない「多大な暗黙の期待」を持つ人もいるかもしれません。
入社者としては、自分が持つ期待を企業に明示的に伝えること。入社後、上司時にも改めて明示的に伝えること。また、その期待が妥当な内容か確認することが大事です。