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Employee Experience Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

Employee Experience とは?

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この記事は2021年の Employee Experience Advent Calendar の1日目です。 この Advent Calendar では、私が1人で全日 Employee Experience 周辺に関する情報を発信します。初回はまず肝心の Employee Experience について説明します。

Employee Experience とは?

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Employee Experience(以降 EX) は従業員が組織での体験から、組織との関わりをどう捉えているかに関する概念です。個人が職場に対して持つ期待があり、それが体験を通して満たされるかどうか。その結果の積み重ねによって、社員がその仕事に今後も強くコミットしていくかどうかが変化していくため、個別の体験を継続して改善することが重要になっていきます。

EX の範囲

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Employee Experience は企業に入社する前、その企業を認知し、選考に参加するフェーズから開始しています。そして、在籍中ずっと継続し、退職するまで続きます。(昨今では、出戻り入社も珍しくないため、ある意味では退職しても継続するとも言えそうです)

詳しくは Advent Calendar の Employee Lifecycle のパートで触れます。

EX の良否

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EX が良好であるか、粗悪であるかは従業員の期待とそれをどの程度満たすことができたかによります。また、単に従業員の求めるものを満たすだけでは、事業が継続できません。従業員の期待と同時に事業の成果を出すことに対する期待を従業員も満たす必要があります。

詳しくは、 Advent Calendar の Employee Alignment , Employee Alignment Dysfunction, Contract のパートで触れます。

EX の影響

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ポジティブな EX を提供できると、従業員が組織のミッションに強くコミットするようになります。例えば、組織が自身の求めるキャリアの経験機会や学習機会・学習支援を手厚くしてくれたとします。個人にとっては、この組織の成果に向き合うほど自分が向かっていきたい方向に近づくため業務にコミットする動機が強まるわけです。結果として業務の質が高まり、事業成果につながりやすくなります。

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逆に、組織がネガティブな EX を提供すると、従業員は組織のミッションへのコミットを下げ、必要最低限の業務だけをのんびりとするような状況になります。場合によっては退職してしまうでしょう。例えば、カスタマーサクセスの道を極めたくて入社した従業員に対して、ジョブローテーションを強制的に命じて営業職に異動を命じた場合、本人の中での納得する説明が得られなければデモチし、労働意欲が低下してしまうでしょう。

この期待が満たされ、ミッションに強くコミットしている状態を Employee Engagement が高い状態と呼びます。詳しくは Advent Calendar の Employee Engagement のパートで触れます。

EX の共通性と個別性

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EXには複数の従業員が共通で求める要素があるでしょう。また、「複数」が含む範囲が広い場合もあれば、狭い場合もあるでしょう。一方、個々人によって異なる期待に応じる必要もあるでしょう。

以下はそれぞれの例です。

種類 範囲 期待 対策例
共通 私生活を大切に柔軟に働きたい ルフレックス、裁量労働制などの導入
共通 担当する専門領域に関する知識・スキルを伸ばしたい メンター制、学習支援制度等
共通 掛け合わせの専門性を持つ人材になりたい 社内公募制の導入、社内短期留学制度等
個別 - 個々人の価値観別の期待 マネージャーによる1on1で個々人の期待を把握し、個別に応じる

EX の実態を掴む

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EX を改善するには、その実態を掴む必要があります。EX の実態は、従業員の個別のタッチポイントでの体験からなります。各自の期待が個別のタッチポイントで満たされたのか、裏切られたのか?この瞬間を Moments of Truth と呼びます。

詳しくは、 Advent Calendar の Moments of Truth のパートで触れます。

EX の例

良好な EX を得た田中さんの例

日頃調べごとをしていて様々な人の発信した情報に助けてもらうことが多かった田中さん。発信文化のある C 社の発信には繰り返し助けられていました。専門的知識の活用が重要な職種の人にとっては C 社に限らず多くの発信に支えられて仕事をしています。田中さんはその自覚が強く、自分自身も他の方々の役に立つことで恩返しをしたい、という価値観を持ち、実際に発信を継続していました。

一方、田中さんの現職は発信文化が薄く、業務中に発信のための時間を確保することができません。そういった点にギャップを感じていた田中さんは、ふと C 社が自分の職種の求人を出していたことを思い出しました。田中さんは 「C 社なら発信を大切にしつつ仕事をすることができるのでは」と考え、まずはカジュアル面談に参加することにしました。なんと、カジュアル面談で出会ったのは自分が頻繁にお世話になっている記事を書いていた佐藤さんだったのです。佐藤さんから社内の発信文化に関する実情を色々と聞くことができ、選考参加の意思を固めました。

無事 C 社に入社することができた田中さん。オンボーディングの一部として自己紹介を会社のジョインブログとして発信することが組み込まれていて、「当初思っていた通りの発信文化だ」という体験を早々にすることになりました。また、オンボーディングの過程でもなぜ発信を大切にしているのか、その意義が説明され、実際に積極的な発信をすることを促されました。また、会社のブログへの発信方法や、その他の発信ノウハウも情報としてまとまっていて、何ならその情報も社外発信されています。

試用期間を終えた田中さんは毎週必ず発信をしながら、業務に邁進することとなりました。

※クラスメソッドっぽい事例になっていますが、実話ではないです。私の場合は、前職も発信に対する理解のある環境でした。

粗悪な EX の例

受託開発の多重請負構造の中で疲弊した鈴木さん。次の職場は自社サービスの仕事がしたいと考えました。求人の条件を自社サービスで絞り込み、 L 社に応募しました。選考中に自社サービスであることを確認し、内容も興味を持てるものだったため、そのまま最終選考まで参加し、無事入社することにきまりました。

そろそろ新しい会社の入社初日だな、と緊張して入社直前の日々を過ごしていた鈴木さん。すると、 L 社の代表から電話で連絡がきました。「急遽お客様の要望で常駐案件をお願いされていて、期間は短期間で限定なので鈴木さんのような方にぜひ助けてほしい!ということになりました。現場の面談があるので明日訪問してくださいね」ということに。結果、入社初日からお客様先に常駐することになりました。真面目で学習熱心な鈴木さんは現場で気に入られ、「ぜひ継続して力をかしてください」と言われ、気づけばずるずると2年が経過しました。稼働も激しく、結局前職で転職を決意した状況と同じです。結果、鈴木さんはデモチして、再転職することとなりました。

まとめ

EX についてまとめました。EX は働いているすべての人に関わる概念ですが、この部分を組織として意識的に改善できている例はまだまだ少ないかと思います。組織的な取り組みの他にも、個々人が周りの人にとっての体験を作る一員でもあるので、多くの人に知ってもらえると自身や周りの体験が向上しやすいかな、と思います。

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