最近「 図解 人材マネジメント入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」 」という書籍を読んでいて、その流れで以下のようなツイートをしました。
即戦力は幻想。中途でも適応のためのサポートが必要。
— てぃーびー - Learning Designer (@tbpgr) September 29, 2020
組織適応してから仕事適応へ。このあたりは、カヤックの柴田さんが以前話していた活躍のためには組織社会化の話を思い出す。組織に馴染めなければどれだけ個人で優秀でも活躍できず、定着しない。#人材マネジメント入門
ここへの反応が多かった流れで、あらためて組織社会化について掘り下げたくなりました。
また、組織社会化について掘り下げた結果、学説が多様でひとまとめにならなそうなので、それをヒントに自身で適応について考えをまとめることにしました。
組織社会化とは?
組織社会化(Organizational Socialization)とは、外部から新たに組織に加わるものが、組織に適応していくプロセスのことです。例えば、新入社員・新規入社の中途社員が組織の文化に慣れ、担当業務に慣れ、既存の戦力メンバーと同様に活躍していくまでの過程のようなものです。ただ、これ以外にも新たな役職になるときや、他の部門・チームへの異動など異なる文化・業務特性のある場に異動することも組織社会化に含まれます。
私はカヤックの柴田さんとの交流をきっかけにこの概念を知りました。
私の所属するスタディストの開発部では1ヶ月に渡る手厚いオンボーディングをしています(ただし所属グループによってコンテンツ量に差異はある)。
比較的しっかりオンボーディングしている他社にも比べてかなり手厚いと思いますが、実はこの手厚さが組織社会化の文脈で考えると重要なのではと思うところもあります。
組織への適応を考える
組織社会化は学説が多様にあり、まとまりがつかなそうなので関連情報をざっと読み込んだ上で改めて自分の頭で組織への適応について考えてみました。
以下の分類で考えてみます。
- 適応対象
- 適応時期
- 適応結果
以降の文章で、適応する本人のことを「適応者」とします。
1. 適応対象
業務適応
業務適応は自分が担当する個別具体的な業務を成し遂げることができるための適応です。
適応者側からすると
- 既存の業務経験との重なり
- 過去の経験を抽象化して、差異のある環境でも適応する抽象化能力
このあたりが、業務適応の要素でしょう。
経験済みの業務は上手く遂行しやすいので過去の経験上やったことがある業務であるほどすぐに適応しやすいと考えられます。逆にいうと異業種転職、異職種転職など、変化の要素が大きくなればなるほど難易度が大きく上がることになります。
差異が大きければ、差異を埋めるための抽象化能力が大きく求められると考えます。
受け入れる組織としては
- 役割の明確さ
- 業務依頼の的確さ
- 業務遂行に必要な要素への支援
などが鍵になるでしょう。
役割として何を求められているかが明確なほど、迷いなくその役割を遂行しやすくなります。
業務の依頼が的確であるほど、想定通りに業務を遂行しやすくなります。例えば単に依頼内容のみを伝えるのではなく、背景を踏まえ、AsIs/ToBeを元に対象の全体像を伝え、想定されるゴール、優先順、期日、ステークホルダーなどを正しく伝えているかどうかで業務遂行の円滑さは変わります。
また、業務遂行時に必要となる情報や支援を円滑に受けられるかも重要になります。例えば以下のようなものなどです。
- 特定の業務を行うために必要な情報を人や情報共有ツールから円滑に取得できるか?
- 業務遂行過程で利用するシステムアカウントが付与されているか、権限は十分か?
- 業務で必要となるスキルへの習得サポートが得られるか?
職場特有の内容になればなるほど事前に習得しにくくなるため、サポートなしではわかりようがないものほどサポートが重要になります。
チーム適応
チーム適応は自分が担当するチームへの適応です。
- 上司と円滑にやりとりできるか?
- 同僚と円滑にやりとりできるか?
- チームの文化に溶け込めるか?
などになります。
受け入れるチームとしては
- コミュニケーション機会の用意
- チーム文化・価値観の明示
- 建設的議論ができる土壌
などが鍵になるでしょう。
建設的議論ができる土壌について補足すると、異なる考え方、風土、前提などと遭遇した際に
- 納得して差異を受け入れる
- 建設的に異論を唱え、結果として差異を与える
- 建設的に異論を唱え、相互の考えが混ざり合う
などが上手く行っている状態が適応者にとって適応しやすい場、ということになりそうです。
逆に言うと
- 無理やり差異の受け入れ強制する
- 異論を認めない
などがあると、考えの相違が発生するたびに不満・不信が募り適応が難しくなるでしょう。
組織適応
組織適応は組織への適応です。
- 組織の方針に納得できるか?
- 所属外のチームとのやりとりを円滑にできるか?
- 組織の文化に溶け込めるか?
などになります。担当する業務レベルが高くなればなるほど、チーム内のみの関わりで成果を出すことが難しくなってくるためこの部分の適応が重要になるでしょう。
特にマネジメントや、業務改善などが職務に含まれている人は組織全体への適応が重要になります。
受け入れる組織としては
- 各主体の役割の明確さ
- 適応者への受け入れ姿勢
- 意図的な交流機会の創出
などが鍵になるでしょう。
2. 適応時期
入社前
インターネットの発達以降、企業の情報は様々な発信を通して事前に得やすくなりました。
この事前に得られる情報から適応者は入社前から一定の期待や予測を持ちます。
例えば
- 選考時に聞いた企業のアピールポイントへの期待を持つ
- 選考時に聞いた担当役割に関する情報から職務への予測を持つ
- 選考以前に企業の発信で見かけたエピソードから、そこで語られていた魅力要素を自分も享受できると期待する
などのように、明示・暗黙などの期待を持ちます。
この際期待と現実との差異が小さいほど、適応しやすくなるでしょう。盛らずに真実を伝えているか、誤認しやすい表現や曖昧に期待を抱かせていないかが重要になります。
オンボーディング期
入社直後が最も変化への適応が必要なタイミングになるため、ここでの適応サポートが最も重要になります。
だからこそ、最近では入社オンボーディングを整備する企業も増えてきているのではないでしょうか。
中途採用なのでほっといても即戦力を期待する、というのは無理筋で職場ごとに適応に必要な要素をサポートする必要があります。内容についてはすでに前述した「適応対象」の部分になります。
オンボーディング後
入社後に組織内でのステップアップをしていく際に円滑に適応できるか、という点になります。
ここに対するサポートが円滑なケースは、1on1でのステップアップのサポートなど社員のキャリアアップに向けた施策が用意してあるかどうかによります。
中核期
専門職にしろマネジメント職にしろ、組織の中核となる業務に関わってくるタイミングでの適応になります。
ステークホルダーとの調整が難しくなったり、事業方針まで踏み込んだ議論など一段回上のコミットと適応が求められます。
受けれ側としては情報開示や、そういった業務に以降していくステップのサポートがあるとよいでしょう。
3. 適応結果
うまく適応していると生み出される結果が適応結果です。
成果
うまく適応できると想定通りもしくは想定以上の成果がでるでしょう。
逆に適応に失敗すると成果がでにくくなります。
能力向上
うまく適応できると着実に能力向上していけるでしょう。
逆に適応に失敗すると能力向上しにくくなります。
エンゲージメント
ここでのエンゲージメントは個人と組織が相互に相互協力しあえる関係性だと個人が感じている状態とします。
うまく適応できるとエンゲージメントが高まるでしょう。
逆に適応に失敗するとエンゲージメントが低下します。
定着・退職
うまく適応できると定着しやすくなるでしょう。
逆に適応に失敗すると退職しやすくなります。
まとめ
人事部門の人間として組織への適応を整理する良い機会となりました。
例えば冒頭で紹介したスタディストのオンボーディングを今回まとめた情報に基づいて考えると
- 適応対象
- 業務適応サポートの要素
- チーム適応サポートの要素
- 適応時期
- オンボーディング期
になります。適応成果については、オンボーディングの最中にでるものというよりは、その直後の実務への本格着手に入ってからになるとは思いますが、このオンボーディング期の適応度によってその後の適応結果が向上しやすくなると予想されます。
関連情報
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