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Organization Development Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

ソフトウェアエンジニア採用における採用広報の必要性、内容、手法、課題に関して

ウェブエンジニアから人事に転職して1年が経過したてぃーびーです。
昨今のソフトウェアエンジニア採用シーンでは欠かせない採用広報について、以下の4項目に関して考えを整理しようと思います。

  1. なぜ採用広報が必要なのか?
  2. 採用広報で何を伝えるか?
  3. どのような手法で伝えるか?
  4. 採用広報の課題

想定読者について

  • ソフトウェアエンジニア採用に課題を抱える経営者の方
  • ソフトウェアエンジニア採用に課題を抱える採用担当者の方
  • ソフトウェアエンジニア採用に課題を抱える開発部門の採用責任者の方(EMなど)

これらの方が採用広報の理解を深めることや、社内のステークホルダーへの説明向けの素材として活用することを意図して執筆しています。

採用広報とは?

採用広報は企業が採用を目的として行う広報活動のことです。

なぜ採用広報が必要なのか?

ソフトウェアエンジニア採用において、採用広報がなぜ以前よりも重要性を増しているのかというと、採用市場の情勢があります。
ソフトウェアエンジニアの採用は、他職種と比べて求人倍率が非常に高くなっています。

一時期に比べてだいぶ下がりましたが、それでも技術系(IT・通信)の求人倍率は 7.05 倍あります。
例えば、営業系なら 1.39 倍。事務・アシスタント系なら 0.18 倍しかありません。

こういった前提により、選考参加企業に選ばれる難易度があがっています。

最近では SNS でのスカウト、リファラル採用など転職意向が固まらないタイミングや、固まった瞬間に個別の採用チャネルに登録する前に企業が求職者さんにコンタクトし、そこでコンタクトできた企業の範囲で転職先が決まるということも珍しくありません。このタイミングで関与できないと、採用競争のスタートラインにもたてないことになります。既存の採用チャネルで候補者情報を検索し「いい人いないなー」とぼやいている人事の方の視界の外で勝負は決している場合もあるのです。

そのため、求職者の方に知ってもらうこと、応募したいと思ってもらえるような企業になることが以前にもまして重要になっています。そこで、採用広報によってより多くの情報を社外から確認可能にし、判断材料をできるだけ多く提供することが必要になります。この情報提供により、求職者さんは応募企業選定や選考ステップを進むかどうか、内定受諾をするかどうかなどの追加材料を得ることとなります。

なお、単にやたらめったら広く訴求できればいいというわけでもなく、自社にマッチした人に訴求する必要があります。採用広報時に企業文化・チーム文化などの情報を適切に伝えることができると、文化面でアンマッチな方の選考参加率が下がるため、相互にとって無駄な時間を使わずにすることになります。
特に現状のソフトウェアエンジニア採用において、主役は現場の開発者です。彼らが採用活動に使う時間が多すぎると、開発業務に支障をきたすこととなります。そのため、できるだけマッチ度の高い少数の選考のみ発生している状況が理想的です。

具体例

実際に1年採用担当をしてみて

  • 社内のAさんの登壇をみたのが応募のきっかけ
  • イベントで登壇をみた同僚にすすめられたのが応募のきっかけ

などのお話を実際に確認できたことが複数あります。

採用広報で何を伝えるか?

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企業、候補者相互の目線で考えると転職活動・採用活動は相互の Want のマッチングです。

  • 企業が該当ポジションに求める要件 = 企業の Want
  • 求職者が転職に求める判断材料 = 求職者の Want

この双方が重なると企業の内定オファー、求職者の内定受諾となります。企業の採用広報としては、求職者さんがこのマッチングの判断をするための素材を提供すればよい、ということになります。求職者の方の判断材料をさらに2つ分けて考えます

  • 転職軸 = 強い動機としての要素
  • 足切り要素 = これ自体は転職動機ではないが、この条件が満たされないなら対象外になる

大きくはこの2点でしょう。一般に採用広報としては前者に訴えかける企業の強みが重視されることが多いかと思います。しかし、足切り要素を満たしている事実を伝える情報も重要となるでしょう。例えば、 COVID-19 の影響下にある昨今において、今更リモートワークが一定利用できることは珍しくないかもしれませんが、利用できるかどうかを足切り要件に据えている方は一定おられるのではないでしょうか。

どのような手法で伝えるか?

採用広報の手段としては PESO モデルが良く語られるところです。

  • Paid - 掲載料が必要な広告など
  • Earned - 第三者目線の信頼を獲得するメディア
  • Shared - SNSや口コミ
  • Owned - 自社メディア、自社サイト、Employee Advocacy、登壇

採用広報の課題

入社後アンマッチにつながらないこと

採用広報の内容が現実に即していない場合、求職者の方の頭の中に「この企業はこういった発信をしていた企業だ。入社したらきっと XXX に違いない」という暗黙の期待が形成されている可能性があります。それを前提に入社の意思決定をした場合、入社後に実態との乖離を実感して結局は短期での離職につながる、という可能性があります。

これは、書籍「エンプロイ-・エクスペリエンス」でいうところの ブランド契約 のギャップを生むことになります。ブランド契約とは、その企業の発信や所属社員の振る舞いから世間から持たれている印象からくる組織への暗黙の約束です。

tbpgr.hatenablog.com

こういったアンマッチを埋ないように、あくまで事実に即したアピールポイントを発信することが大切です。

社内トラブルの元ににならないこと

発信内容が社内の認識とずれていると、採用広報の担当や組織への不信・不満が募ることになります。
採用広報は魅力を伝える面が大きいため、ついついプラスの情報を伝えたくなりがちで、ともするともられてしまうこともあるかもしれません。しかし、あくまで事実に即したアピールポイントを発信することが大切です。(2回目)

採用広報のリソース

採用広報は重要・緊急マトリクスでいえば、重要かつ非緊急でしょう。

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実際に効果が得られるのも長期的に取り組んだ後になりやすく、また成否の因果関係も判断が難しいというおまけ付きです。
そのため、実行の必要性に対する理解が不十分だと、ついつい他のことに利用する時間を優先し、採用広報への人・時間の面でのリソースが獲得できずに継続が難しくなりがちです。実施への障壁が少しでも減るように、例えばブログのお題リストや執筆観点を用意したり、ペアレビューやペアブログで執筆支援をするなどサポートを強化するのも手でしょう。

まとめ

採用広報についてまとめました。

おそらくソフトウェアエンジニアの採用広報に熱心と思われる対象として企業開発公式ツイッターアカウントをまとめた Twitter のリストを作成しました。各社がどのように、どんな内容の発信をしているか参考にどうぞ。

twitter.com

関連情報

まとめる過程で、参考にした記事です。