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プロダクトマネージャーのルーツであるトヨタの主査制度について書かれた書籍『「タレント」の時代』に関するまとめ

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お仕事の関係で書籍『「タレント」の時代』を読んだので、そのまとめを書き残します。
「タレント」の時代はトヨタの主査制度(トヨタ流製品開発)に関する話です。
主査は最近 rebuild.fm でもよく話題にでているプロダクトマネージャーのルーツでもあります。

3行まとめ

時代背景により企業製品の生産方式は差別化要素にはならず 設計情報 が差別化要素となってきている。
設計情報を生み出すのは創造的な才能にあふれる知識労働者である タレント である。
このタレントの力を生かして良質の設計情報を生み出すためにトヨタ主査制度 をつくった。

用語

書籍『「タレント」の時代』での用語定義です。

設計情報とは?

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ものづくりを情報化したものを工学用語で プロダクト・モデル と呼ぶ。
プロダクト・モデルは、部品や形状のみではなく購入先、価格などの情報も含んでいる。

このプロダクト・モデルの事を経営学者の 藤本隆宏 氏は 設計情報 と呼んでいる。

ものづくりの本質は設計情報である。
設計情報に基づいて実際の製品が作られているのは設計を 転写 しているに過ぎず、
本当の価値は設計情報が生み出している

タレントとは?

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問題を見つけてどんどん解決してしまうようなタイプの優秀な人。
この文脈では設計情報を生み出すことを期待されている。
言い方をかえるならば、

解決すべき課題を見つけ、
その解決方法を明らかにし、
どのようにその問題を解決するか?

といった 非定型な知識労働 を行うことができる人物である。

タレントはプロフェッショナル・スペシャリスト達をコントロールし、
質的に異なる意味のある新しい何か
を生み出す人である。

タレントはプロフェッショナルであり、スペシャリストでもあることが多い。

定型的な知識労働(課題が決まっていて、解決策としてのゴールも決まっている領域)
と比べて非定型な知識労働は難易度が高く、その分価値が高い。

プロフェッショナルとは?

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プロフェッショナルは決まったことを確実に仕上げるような人。
この書籍の文脈では定型的な業務を指している。

スペシャリストとは?

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スペシャリストは特定の分野に詳しい人。
この書籍の文脈では定型的な業務を指している。

給与は?

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書籍では給与相場は以下のようになるとされている。

職務内容 Rank 相場
定型労働 💰 時給1,000円
改善労働を伴う非定型労働 💰💰 年収300-500万円
知識を伴う定型労働 💰💰💰 年収400-600万円
複数分野の知識を伴う創造的知識労働 💰💰💰💰 年収1,000万-数億円

現状の日本の問題として、 定型労働を担当しているものが相場以上の給与をもらいすぎである ことと、
創造的活動を伴う労働を担当するものの給与が安すぎ て海外に簡単にヘッドハントされてしまう点が
挙げられている。

企業が生み出す価値の核は設計情報です。
その設計情報を生み出す中心人物は創造的知識活動を行うタレントである。
創造的知識活動を行うタレントの存在こそ収益の源泉となるはずなので、
そこできちんとした待遇をすることが重要である。

主査制度とは?

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期待される素質のある人材を見抜き、選抜し、育て、商品に関わることすべてに責任をもつ一人のタレントと、
その商品の構成要素を担当する、各専門分野のタレント・プロフェッショナル・スペシャリストを組み合わせて、
優れた商品を作り出す仕組みのこと。

Googleのプロダクトマネージャーは主査制度からきている。

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仮に、現状の問題点として現状にそぐわない古いしきたりや慣習による弊害によって、
本来あるべき意思決定が行われずに企業の競争力が損なわれていたとします。

この問題点を発見し、原因を特定し、解決策となるシステムの構想を練り、
どういったメンバー・設計・ライブラリ・手法・ツールを用いてそれを解決し、宣伝をし、利益を生むか?
つまり、 良質な設計情報を生み出すことによって利益を生み出すのがトヨタでいう 主査 であり、
ソフトウェア開発でいう プロダクトマネージャー である。
プロダクトマネージャーを担当するのは特に優秀な タレント である。
そしてこのプロダクトマネージャーを中心とし、
優秀な開発者やデザイナー(この人たちもタレント)を中心としたチームで価値ある設計情報を作り出すこと、
これが 主査制度 である。

参照

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