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Employee Experience Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

求人票の年収と既存社員の年収のズレが発生しているように感じる3つの原因

求人票で公開されている年収と既存メンバーの年収のズレが原因でデモチした、退職を決意した。
そんな情報を SNS で時折目にします。

一番典型的なのは、採用市場の激しさから、是が非でも採用を成功させるために既存社員の年収との整合性を無視して高い金額で募集をするケースでしょう。
しかし、「求人票で公開されている年収と既存メンバーの年収のズレが原因でデモチした」というケースは他のバリエーションもありそうです。そこで、考えられるパターンを整理してみることにしました。

求人票の年収と既存社員の年収のズレが発生するパターン

原因1 社内とのバランスを無視しているケース

最も典型的なケースかと思います。 採用競争に勝つためには社内バランスなど気にしていられない。採用できる金額を提示しよう。そんな価値観の企業です。

例えば、並ぐらいのウェブエンジニアの既存メンバーの年収が400万くらいだったとします。
このとき新規採用はこの金額だと難しいため、550万を下限年収にしたとします。ここで、既存メンバーよりもスキルレベルは低いけど給与が150万高い人が入社したとすると既存メンバーがデモチするのも当然です。

社内とのバランスを無視していないケース

社内とのバランスを無視していないケースもありえます。 既存メンバーを大切にする。フェアさを大切にする。そんな価値観の企業 です。
そんな企業でも採用時の年収と既存メンバーの年収がずれているという誤解が発生する余地があります。

原因2 求人票の給与レンジが表す意味を未把握

求人票の給与レンジの意味について、みんなが同じ認識をしているとは限りません。
求人をする際に求人票に記載される年収は、一般的に社内の評価制度上のグレードにおいてどのくらいの範囲の人を採用するかで決まります。 ※なお、評価制度は多様なので実際は異なるケースもあると思います。たぶん多勢であろうというケースを例に説明しています

仮に、ざっくり

  • S - CxOクラス / 1000万以上
  • A - 部門長クラス / 800万以上 ~ 1000万未満
  • B - マネージャーもしくはそれに相当するスペシャリストクラス / 700万以上 ~ 800万未満
  • C - 並より上だがBまでは至らないリーダーやスペシャリストクラス / 600万以上 ~ 700万未満
  • D - 並 / 500万以上 ~ 600万未満
  • E - ややジュニア / 400万以上 ~ 500万未満
  • F - 新卒、未経験など / 400万未満

のようなグレードと報酬レンジの会社だったとします。

このとき、どんな範囲で求人を出すのかは各社多様です。

例えば、広めに B ~ D レベルまでを想定した求人を出したとします。

  • B - マネージャーもしくはそれに相当するスペシャリストクラス / 700万以上 ~ 800万未満
  • C - 並より上だがBまでは至らないクラス / 600万以上 ~ 700万未満
  • D - 並 / 500万以上 ~ 600万未満

対応する年収としては 500万~800万で求人票に記載されることになります。 このとき、この求人の金額がそういう意図で記載されていることを知らない年収500万でグレードDの下限という評価になっている既存社員からみると

「自分は年収500万なのに、500万~800万で採用してる・・・。入社しなおしたほうが高くもらえるのでは?」

と感じてしまうかもしれません。
実際はこの人がグレードDの下限相当の評価で、新しく入る人もグレードDの下限で選考評価されたら同じ額で入る場合もあり、特別不整合はないにもかかわらず不正に低い年収設定をされているという印象になってしまっているケースです。

原因3 本人の評価が求人票のレンジより低い

例えば求人票は先程の例のグレード C から D の中間を想定しているとします。

  • C - 並より上だがBまでは至らないクラス / 600万以上 ~ 700万未満
  • D - 並 / 500万以上 ~ 600万未満

対応する年収としては 550万~700万で求人票に記載されているとします。
そして、不満を持った Z さんは年収500万だとします。この場合単に求人している最低ラインよりも Z さんの評価水準が低いだけで順当なのです。

まとめ

「求人票で公開されている年収と既存メンバーの年収のズレが原因でデモチした」というケースの分類を整理してみました。

原因1 のケースは純粋に既存バランスを無視する意思決定をした企業が抱える問題です。

原因2, 3 のケースは評価制度、グレード、報酬制度、求人票の年収の意味、選考評価と年収がどのように決まるか、などに関して経営・人事・マネージャーなどは知っているが、一般の社員の多くは知らない、という情報の非対称性から発生するものです。
その意味で、

  • 評価制度、グレード、報酬制度に関する社内理解の強化
  • 求人に記載される年収の意味
  • 採用時の年収決定ロジック

あたりは全社的に情報が開示され、内容もわかりやすい内容になっていれば原因2, 3 のケースの不要な認識齟齬が出にくいのだろうなと思います。
マネージャーだけではなく、個別社員も採用に関わっていると結果的にここの理解度があがって誤解が発生しにくくなることもありそうです。