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Organization Development Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

穴あきバケツの組織運営と穴を塞ぐ意図的な組織の能力育成

会社組織における短期的な成果を売上、利益と考えるものとします。
これらは組織の能力によってもたらされます。
組織の能力は例えば、組織内にいる個人の能力、チームとしての能力、作り出された仕組み、形式化されて共有されている知識などです。
組織の能力は長期的に作り込まれます。
組織の能力が高まるほど、より高い創造性による新たな価値や、より高い生産性による利益率の向上が導かれます。

組織の能力を意識的に強化している企業とそうではない企業について考えてみます。

偶発的な組織の能力育成

短期の成果を重視し、特に意識的に組織の能力を強化する取り組みをしない場合を考えます。

  • 個人の育成をする取り組みを用意しない
  • 個人の成長を評価しない
  • ふりかえりによる業務の改善を行う取り決めを用意しない
  • 業務の改善を評価しない
  • 個人の知識を形式化しない

組織内の個人が成長するような業務の割当や、教育などを行わない場合、実際に個人が成長するかどうかは個人の自主的な努力やたまたまアサインされた業務が本人にとって新たなものであるかどうかに依存します。
また、短期利益を追求するあまり社員個人の成長機会を奪い、特に成長に寄与しない業務を朝から深夜まで割り当てることは、個人の人生のリスクを高め、リターンを減らす代わりに組織が儲けている構造だと考えることができそうです。

ふりかえりによる業務の改善を行わない場合、たまたま視点が鋭く役割の領域をこえる意気込みがある人が居ない限りは業務プロセスは改善されません。

また、仮に個人の育成をしていて、業務の改善のふりかえりもしていたとしても、それが一切評価されないのであれば長期的には取り組みが縮小して行くと考えられます。

この状態は結果的に離職率を高め、それによる個人に紐付いた暗黙知の流出により組織の能力は大きく欠けていきます。

これは Webサービスにおける 穴あきバケツ の組織版とも言える状況に見えます。

意図的な組織の能力育成

長期の成長のための時間を確保し、意識的に組織力を向上させる取り組みを業務に組み込みます。

  • 個人の育成をする取り組みを用意する
  • 個人の成長を評価する
  • ふりかえりによる業務の改善を行う取り決めをする
  • 業務の改善を評価する
  • 個人の知識を形式化する

組織内の個人が成長するような業務の割当や、教育などを行う場合、その意図が想定どおりに機能すれば個人は大きく成長していきます。

ふりかえりによる業務の改善を行う場合、業務は常に改善されていき、生産性が高まります。

個人の成長や、業務の改善が評価に紐づくと納得感や充実感からその取組は継続しやすくなります。
また業績がよくなるため環境や待遇も良くなっていくと考えられます。

この状態は結果的に離職率を下げ、それによる個人に紐付いた暗黙知の流出を防ぎ組織の能力を保ちます。
また、個人の知識を形式化しておくことでそれが他者に伝搬してさらに組織力を増したり、離職が発生した際の暗黙知の流出量を減らすことができます。

まとめ

いま、組織の利益が何によって生み出されていて、その変化は何によって起こっているのか、ということをできるだけ把握していると、継続的に育成することの重要性を把握しやすくなりそうです。
そのためには、目に見える物を増やすことが必要そうです。
例えば 1 on 1 であったり、マネージャーがメンバーのどの成果が組織の能力に結びついたかを認知する能力であったり、個人が自身の成果を理解し報告できるようにすることなどがありそうです。
どのエピソードか忘れましたが、 EMFM で組織の問題検出をモニタリングに例えていた回があり、それに近いイメージですね。

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個別のアクションから、組織の能力が作り込まれ、それが組織の成果に影響を与える。
この関係性をできるだけ理解しやすい状態にしておくことが、意図的な組織の能力育成に対して大きく投資するための支えになりそうです。

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