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EX Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

『業務の引き継ぎ入門 ZennBook』を公開しました

担当の交代、異動、退職。避けては通れないのに、特に決まった型もなく本人任せになりがちなのが業務の引き継ぎです。

私自身受託開発のウェブエンジニアの出身という面で、引き継ぐ側・引き継がれる側の双方の経験が多くありました。そのうえで、人事になってからは、ひとかたまりの業務の責任者を私が引き継ぎ、さらにそれを引き継ぐということもありました。そんな試行錯誤を経てたどり着いた、引き継ぎを単なる作業の受け渡しで終わらせず、組織と個人のアップデートに変えるための型を一冊の本にまとめました。

zenn.dev

ZennBook の全体像

本書で引き継ぎと業務のマネジメント基盤

担当者の場合、個人の作業タスクの引き継ぎが中心ですが、一定領域の主担当者であったり、部門やチームのマネージャーの場合、引き継ぐ内容は普段業務のマネジメントやピープルマネジメントとして行っている内容になります。直感・暗黙知を中心にマネジメントしていると、引き継ぎが必要なタイミングで初めて整理することになりますが、形式化・仕組み化することができているとその内容がそのまま引き継ぎ可能になります。そういった側面を理解するうえで ZennBook では責任者の範囲・担当領域・作業タスクの3分類ごとの引き継ぎ内容を整理して紹介しています。

また、引き継ぎのタイミングは業務を棚卸しし、引き継ぎに集中できるレアな機会になりがちです。普段できなかった不要業務の発見からの停止や、小さな手間でできる範囲の業務改善をしやすいタイミングでもあります。そんなときには、後任の負担を減らし、個人の業務改善の経験値をいる意味でも引き継ぎ兼業務改善がおすすめです。

生成AIの登場と、これからの引き継ぎの未来

さて、 ZennBook の後半でも触れていますが、これからの引き継ぎのあり方は生成AIによって変わっていくはずです。

正直に言って、資料を清書する・要約する・図解するといったドキュメンテーションの実行コストは、今後限りなくゼロに近づいていくでしょう。AIという優秀なアシスタントがいれば、既存のタスクの情報、議事録、手順書などから生成AIを活用して最小の手間で作成したり、場合によっては作成自体不要で後任がAIに質問するだけで済むかもしれません。

それでもコンテキストはAIには作れない

しかし、ここで忘れてはいけない本質があります。AIは記録されている情報や、一般的な職務内容の範囲については情報を整えることはできても、記録されていない独自の業務や、あなたの頭の中にしかないコンテキストをゼロから生み出すことはできない、ということです。

  • なぜ、この非効率に見える手順が、あえて残されているのか?
  • このステークホルダーと信頼を築くための、非公式な作法は何か?

こうした暗黙知は、本人が意識的に言語化しようとしない限り、AIが勝手に読み取ることはできません。コンテキストがなければ、引き継ぐべき内容そのものが存在しないも同然なのです。

普段からの可視化こそが、最高のギフトになる

結局のところ、これからの時代の最高の引き継ぎとは、去り際に必死に資料を書くことではありません。普段から業務の情報を可視化し、暗黙を形式化しておくことそのものです。

日頃から情報を構造的に捉え、判断の根拠をログとして残しておく。その積み重ねがあるからこそ、いざという時にAIを味方につけて、最小限のコストで最大限の価値を後任に渡すことができるようになります。

引き継ぎは、自分の跡を濁さないための事務作業ではなく、後任がスタートダッシュを切るための土台を整えるクリエイティブな仕事です。 そして、その状態は引き継ぎの有無を問わず、業務を適切にマネジメントできている状態と近いものでしょう。