夏のジンジニアMeetup!で「開発出身の強みと人事関与による恩恵」というテーマでLT登壇をしました。
登壇レポートはこちら。
ここで、ITエンジニアの強みとして
- 問題の明確化
- 具体と抽象の往復
- プロセスの設計
などを紹介しました。ちなみに時間5分のLTのため3要素にしぼりましたが、実際には他にも
- タスク管理
- 情報共有
- ITリテラシー
などもありますね。
一方で、ITエンジニア時代とは異なる要素もあり、異なる能力を求められる部分もあります。 今回は、「異なる能力」の要素についてまとめます。
ITエンジニアが人事になる場合に必要な要素
なお、私の経験上
- 採用
- 組織開発
- 人材開発
の範囲の経験のみのため、その他の人事領域の特性については異なる面もあるかもしれません。
複数業務の同時進行
ITエンジニアの場合、単一もしくは少数のプロダクト・プロジェクトに関わる方が多いかと思います。
職務の特性上、固まった時間で集中して考える事が重要であり、逆に複数業務が同時進行するような形だとコンテキストスイッチのコストが大きくなり、非効率になります。
一方で人事の場合、担当領域による差異はあれど開発ほど単一の業務に集中できる状況とは限りません。 大抵複数の施策、運用業務、関係者とのうちわせ、問い合わせ対応などが入り混じった中での業務になります。
曖昧な状況
ITエンジニアの業務に比べてゆるふわで曖昧な情報や状況を扱うケースが増えます。
人との関わり
ITエンジニアの業務に比べて人との関わりの重要度が高くなります。 ITエンジニアの業務に関しても人との関わりが重要ではないということではありませんが、相対的に重要度や業務全体において人と関わりの量や、協力して物事を進める機会が多くなります。
重い出来事
ITエンジニアの業務に比べて人との組織、人に関わる重い出来事を扱う機会が増えます。
例えば対人間の衝突、退職に関わる業務などがありえます。
また、組織に関わる重要な決定事項も、人事はいち早く知らされ、全社展開の一部に関与することもあります。
継続的な批判
ITエンジニアの業務に比べ、人事関連の職務をしていると各所から批判を受け取る機会が多くなります。
全社員向けの業務になるため、仕方ない面があります。
批判には、丁寧で建設的な批判もあれば、非難に近い攻撃的なものもあり、内容は様々です。
組織の健全性にもよりますが、ある程度大きな組織にいればこういった問題は発生してしまうものでしょう。
見本となる先輩が少なくなりやすい
ITエンジニアに比べると組織における人事の人数は少なくなるため、見本になる先輩が少なくなりがちです。
必要な要素を踏まえて求められる能力
複数業務の同時進行に対応する能力
- 割り込み発生時の経過情報の記録とそれによる復帰コストの軽減
- 業務全体のうち、集中して行う業務と細切れで行う業務が固まるようにする業務デザイン
- 依頼の実施、結果の受け取りなど他者との連携が必要になる業務のタスク管理
曖昧な状況に対応する能力
- 曖昧さ耐性(曖昧な状況にポジティブな姿勢を持てる)の向上
- 処世術と呼ばれているような「うまくやる」能力
- タイミングを見計らう能力
- 問題はあるが、今解決できなそうなものは時期を見計らって改めて対応する
- 解決に適した機が来たら、逃さずに即動く
- 情報収集力
- 不明確な状況に対して即行動をせず、まずは情報を集めること
人との関わりに対応する能力
- 関係者と信頼構築をすること
- 関係者と敵対しないこと
- 多様性を受容できること
- 相手が人間があり、感情を持っていることを踏まえた対応ができること。論理だけでやりとりしないこと
- 意見の対立を扱えること - コンフリクトマネジメント
継続的な批判に対応する能力
- もらった情報における感情と意見を区別し、意見部分のみをフラットに判断し改善に活かせること
- 納得できない攻撃的な意見に対するストレス耐性を持っていること
- スルー力
- 敵対的な解釈をせず、好意的な解釈をすること
- 未熟に対して寛容であること
見本となる先輩が少なくなりやすい状況に対応する能力
- 自学自習。自ら学ぶ能力
- お互いに刺激を与え合える人との社外交流
まとめ
ITエンジニアが人事になる場合に必要な要素のうち、ITエンジニアの業務ではあまりなかったものに対してその要素とそれに関わる能力についてまとめました。
ざっとまとめてみると、リーダーやマネージャーに必要とされる能力とほぼ同じです。
ITエンジニアのままキャリアアップしていく場合も、マネジメント方面に行くにはマネジメントスキルが必要ですし、技術的なリーダーをやる場合もリーダシップに関わるスキルが必要となります。そのためどのみち必要になる能力とも言えそうですが、人事領域の場合はリーダーやマネージャーではない担当者の場合もそれに近い能力を求められる面があるということになります。
補足
なお、人事領域においても事務的な業務を主に担当し、ここにまとめたようなハードな状況やそれに対応することを求められない場合もあります。 一方で、開発から人事になる、という文脈でいうと事務的な業務のみを担当するために人事になるケースはおそらくほぼないと思われるため、例外として触れていませんでした。