全社、部門、チームなどに存在する組織課題に関するアラートがマネージャーや人事に共有される場合、何かしら形を変えて共有されることが多くあります。
どのように形を変えるのか、そのパターンにはどのようなものがあるでしょうか?
組織のアラートは形を変えて伝わってくる
組織のアラートは、組織内でなにか具体的な出来事があり、そこに関わった人がいて、その人がその出来事を問題だと考え、マネージャーや人事に直接的、もしくは間接的に伝わって来ます。 元となる出来事は1つのこともあれば、積み重ねの場合もあります。
このプロセスを詳細に追いかけてみます。
具体的な出来事
まずはじめに組織活動上の何らかの出来事が発生します。
出来事の解釈
発生した出来事に関わった人や、その内容を聞いた人が出来事を解釈します。 同じ出来事があったとしても、それぞれの人の解釈は異なります。
アラートの発信
発生した出来事が問題だと捉えた人がアラートとして誰かに助けを求めます。
アラートの伝言
発生した出来事が問題だと捉えた人が、問題の解決を主導してくれる人ではなく、同じような立場の人に相談をすることがあります。 そして、相談された人がアラートとして誰かに助けを求めることがあります。 毎回これが発生するわけではありませんが、発生した場合は伝言ゲームになり、情報がさらにねじれやすくなります。 一方で、このとき取り次ぐ人が情報の整理が上手い人が間に挟まると、むしろ情報のねじれが解消される場合もあります。
伝わったアラート
アラートを上げた人から直接か、伝言ゲームが発生するか、状況によりますが、最終的にアラートが伝わってきます。
形を変えるパターン
ここまで紹介したようなプロセスを経て、アラートの情報が伝わってきます。
このプロセス全体において、アラートの情報がどのように変化してしまうか、以下のようなパターンがあります。
- 大雑把に伝わってくる
- 片側の視点のみで伝わってくる
- 主観とともに伝わってくる
- 伝言ゲームで大きく変化して伝わってくる
例示のための出来事
仮に
- チームの方針に関して賛否両論激しくぶつかりあった
という出来事があったとして考えてみます。
※なお、以降の例はあくまで説明のための例示で、特に実際の出来事とは関係ありません
1 大雑把に伝わってくる
具体的な出来事の情報が分からず、大雑把な課題感として伝わってくるパターンです。
例えば、「例示のための出来事」に対して、その出来事に関わったBさんから
- チームの雰囲気が険悪で困っている
と伝えてきたとします。これは、具体的な出来事に対するBさんの解釈です。 そして、これを聞かされた人はこの情報だけだと何を元にそう考えたのかわかりません。
2 片側の視点のみで伝わってくる
一方の目線のみで課題感が伝わってくるパターンです。
例としては「大雑把に伝わってくる」と同じです。
これは、Bさん視点でのBさんの解釈のみが分かっている状態です。 仮に同じ場にいたAさんや、他のメンバーは「チームで異論を率直に言い合える健全な状態」と考えているかもしれません。
このような解釈の違いだけではなく、同じ出来事に対して知ることができた情報量が異なる場合もあります。
3 主観とともに伝わってくる
具体的な出来事ではなく、主観をもとにした課題感が伝わってくるパターンです。
例としては「大雑把に伝わってくる」と同じです。
これは、実際に発生した「チームの方針に関して賛否両論激しくぶつかりあった」という出来事ではなく、それを元にBさんが主観的に感じた内容を伝えている状態です。
4 伝言ゲームで大きく変化して伝わってくる
複数の人を経由して、伝言ゲームとして伝わってくるパターンです。
例えば、「例示のための出来事」に対して、その出来事に関わったBさんはCさんに
- チームの雰囲気が険悪で困っている
と伝えたとします。 そして、Cさんが悲観的でオーバーな人だった場合、Cさんからマネージャーに
- チームの雰囲気が最悪なのはマネージャーであるあなたの責任なので、どうにかしてください
と伝えたとします。
Bさんは
- 軽く困っている
くらいの課題感だったとします。一方でCさんのニュアンスだと
- チームの危機でありマネジメント責任である
という重いニュアンスに変わってしまっています。
元の形を知る方法
変化して伝わってきたアラートの情報から実際に起こった出来事を辿るには以下のような方法があります。
- 具体的な事実の確認
- 多面的な情報の確認
- 時間軸の情報の確認
1 具体的な事実の確認
最も重要になるのは、アラート対象となる「出来事」に対する具体的な事実を確認することです。
できる限り当事者から確認することが大切です。
この際に、具体的な情報を集めるために解釈質問と事実質問を用いて、主観による解釈と客観的な事実を区別することが重要です。
解釈質問と事実質問に関する詳細は以下を参照ください。
例えば、先程の例の「チームの雰囲気が険悪で困っている」は解釈ですが、実際の事実は、「チームの方針に関して賛否両論激しくぶつかりあった」です。 また、この事実をより詳細に掘り下げる質問をすることで、もっと具体的な内容を把握することができます。
2 多面的な情報の確認
1人からだけではなく、複数の人から情報を確認することで多面的に情報を確認することが必要な場合もあります。
人によってその出来事をどのように捉えているか異なりますし、その出来事に関わる情報量をどのくらいもっているか異なります。
例えば、先程の例の「チームの雰囲気が険悪で困っている」はBさんの解釈ですが、Aさんは「チームで異論を率直に言い合える健全な状態」と解釈していたとします。 これは両方の話を聞かないと分かりません。 また、さらに前提となる情報をAさんに聞いてみると、「元々チームで異論を言い合えていない状態だったので、言い合えるようにし始めている最中」ということがわかったとします。 一方で、Bさんは入社したばかりでこの背景を知らなかったとします。こういった、持っている情報量の差によって出来事に対する解釈が異なる場合もあります。
3 時間軸の情報の確認
その出来事が単発ではなく、複数の出来事の連鎖として発生していることもあるため、時間軸で情報を確認するのが必要な場合もあります。
例えば、
- チームで異論を言い合えない
- チームで異論を言い合えるようにしようという話し合いが発生する
- Bさんが入社する
- チームで異論を言い合う取り組みを始めた
- Bさんが異論をぶつけ合う場に立ち会って「チームの雰囲気が険悪」と感じる
- BさんがCさんに「チームの雰囲気が険悪」と伝える
- Cさんが「チームの雰囲気が最悪なのはマネージャーの責任。どうにかして欲しい」と感じる
- Cさんがマネージャーに「チームの雰囲気が最悪なのはマネージャーであるあなたの責任なので、どうにかしてください」と伝える
のように整理するような形です。
まとめ
組織のアラートが形を変えて伝わってくるプロセス、パターン、対策についてまとめました。
関係者から「これはやばい!」「助けて!」「こうしてくれないと困る!」などのような形で伝わってくるアラートは変化して伝わってきます。
その変化の内容によって、
- 本当に重要で対応が必要
- 確かに課題ではあるが、緊急度や重要度は高くない
- 誤解が発生していただけで、誤解を解けばよい
- 個人的な願望で、対応すること自体に無理がある
- 個人の価値観の中では問題だが、組織としては問題ではない
など多様なケースがありえます。
ここを解きほぐさずに全てに対応していると、本来不要だったことに大きく時間を使ったり、状況が悪化することすらありえます。 そういったことにならないように、変化前の情報を把握することが大切です。 とはいえ、感情とともに切迫感がある伝達にはついつい強く反応してしまいがちです。感情に対して思いやりを持って受け入れつつ、一方で冷静に状況を掘り下げる。そのような対応を大切にしていきたいところです。