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ストレスの予防、緩和、解消のためのコーピング

人間、日々過ごしていれば多かれ少なかれストレスを感じます。

ただ、同じ出来事を経験しても人によってそれを強いストレスと感じるか、あまりストレスと感じないかは異なります。 これは、出来事に対する認知が異なるためです。 例えば、運悪く鳥の糞が頭に落ちてきたときに、自分の運の悪さを拡大解釈して「不吉・・・。悪いことが続けて起こるかも・・・」と不安が膨らむ人もいれば、「ウンがつくぜ!せっかくだからあとで笑い話にしよう」と笑い飛ばす人もいます。

また、ストレスフルな出来事に対する行動で、ストレスを緩和できる場合もあれば、悪化する場合もあります。 例えば、相手の言葉の裏を読みすぎて攻撃的な解釈をした結果、相手に反撃をし、結果的に本当に敵対してしまう人がいるかもしれません。この場合、状況はさらに悪化します。
一方で、好意的に解釈して友好関係を深める人もいるかもしれません。

ストレスが膨らみやすい認知、行動をとりがちな場合、これを変えていくことでストレスの発生を予防したり、緩和したり、悪影響の循環を止めやすくなります。 私は昔、多重請負環境での過剰労働やパワハラにより、メンタルを消耗し、カウンセラーさんの指導のもと認知行動療法を実施して回復した経験があります。
昔の私は「ストレスが膨らみやすい認知、行動をとりがち」な人であり、認知行動療法によって、認知や行動を変化させてきたということになります。

今回、認知行動療法においてストレスの解決や対処を扱う「コーピング」について掘り下げます。

なお、ストレスの扱いに関して以前このブログで認知行動療法を紹介しました。コーピング以外の認知行動療法全体が気になる方はこちらを参照ください。

上記の記事やこの記事は以下の書籍を参考にしています。

前提 - ストレスの影響

コーピングの話に入る前に、ストレスの影響について整理します。

ストレスの元であるストレッサーの影響でストレスに対する反応であるストレス反応が発生します。

ストレス反応には以下の4種類があります

  1. 認知
  2. 行動
  3. 身体反応
  4. 感情

があります。 各要素はそれぞれが影響を与え合います。 また、認知と行動は変化させることが可能ですが、身体反応と感情は直接変化させることができません。 身体反応と感情の負の反応は認知と行動の変化を通して間接的に変化させる必要があります。

例えば

  • ストレッサー - 上司から指摘を受けた
  • ストレス反応
    • 認知 - 叱られた。もうだめだ
    • 行動 - 自信がなくなり消極的になる
    • 身体反応 - 不安から睡眠不足になってくる
    • 感情 - つらい

のような状態になっていたとします。

この場合に、

  • 認知 - 指摘に目を向けると自分を改善するヒントを得たと捉えることができる。ヒントをもとに実際に改善すれば問題ない
  • 行動 - 具体的な改善方法の検討と、着手をする

という認知、行動に変更する余地があります。 もし、このように切り替えることができれば、その影響を受ける身体反応や感情もプラスに転じてきます。

コーピング

コーピングは、ストレッサーを解決していく活動です。

コーピングは大きく分けると2つに分類されます。

  1. 問題焦点コーピング - problem-focused coping
  2. 感情焦点コーピング - emotion-focused coping

それぞれについて掘り下げていきます。

問題焦点コーピング

問題焦点コーピングは、問題そのものを解決するアプローチのコーピングです。

積極的な問題焦点コーピングとしては、問題を根本的に解決することを試みます。 いわゆる問題解決です。対象の問題が解決可能な場合には、これが有力な選択肢の一つになります。 例えば、上司の方針がわからないことで仕事の進行方針に困る、という問題があった場合に、上司は方針が伝わっていない事に気づいていないだけかもしれません。伝わっていないことを率直に伝えることで、改めて詳細に伝えてもらい、問題はあっさり解消する可能性がありえます。

消極的な問題焦点コーピングとしては、問題を根本的に回避することを試みます。 対象の問題が解決不可能な場合には、これが有力な選択肢の一つになります。 例えば「苦手な人から離れる」などです。

ただし、回避すること自体にデメリットが伴うこともあるでしょうから、それを踏まえた判断になります。

感情焦点コーピング

感情焦点コーピングは、問題が発生したあとの捉え方や気分の変化を狙うアプローチのコーピングです。

積極的な感情焦点コーピングとしては、問題に関する認知を変化させることで、ストレスを減らすことを試みます。 ストレッサーの問題が大きい場合は、捉え方を変えることで心理的なダメージを軽減するのに役立ちます。 例えば、瞬間湯沸かし器のような人が身近にいる際に、その言葉にダメージを追っている状態から、その理不尽な発言をむしろ楽しむ、くらいの解釈をするようなケースです。

逆に、自身が物事を悲観的に捉えすぎるためにストレスが高まっている場合は、この部分こそが根本的な問題であり、問題の解消につながる可能性があります。 例えば、軽微なミスを指摘された場合に、「強く攻撃された」と感じ、能力の不足を課題に感じて今後に自信をなくすなどの状態になっている場合、その認知を「問題点を改善するヒントをもらった」というような方向に変えることができれば感じるストレスは大きく減ることになります。

消極的な感情焦点コーピングとしては、問題が発生したあとの気分転換や気晴らしで感情を和らげることを試みます。 これについては、一定の効果はあるものの問題そのものを解決できるわけではなく、あくまで一時的な対症療法に過ぎないため、常にこの選択肢だけでは無理がでてきます。

まとめ

ストレスに対処する方法であるコーピングについてまとめました。

問題に焦点を当てる問題焦点コーピングと感情に焦点を当てる感情焦点コーピングを紹介しました。 それぞれ、例をもとに説明したものの、実際に変化をもたらすのは簡単ではなく、周りの助力を得ながら長い時間をかけつつ変化させていくものでしょう。 ただ、自分が直面している問題を詳細に把握し、どのように扱うかを繰り返していくことで少しずつストレッサーの取り扱いがうまくなるだろう、と個人の経験から感じています。

私自身、一度潰れてしまう前は非常に打たれ弱い人間でした。その後、認知行動療法とであい、その後、問題解決について繰り返し向き合い、物事を詳細に捉えることを繰り返してきた結果、ちょっとずつ物事の捉え方や行動の仕方が変化してきたように思います。生存バイアスかもしれませんが、認知行動療法を試してみる価値はあると思います。

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