個人的に 「Mr ふりかえり」 だと思っている森さん 執筆の「ふりかえり読本 場作り編」を購入しました。
気になる点をまとめてみたいと思います。そして最後に話は思わぬ方向に。
ふりかえり読本感想
気になった章の気になった部分を抜粋して感想をまとめます。
対象読者
この本の対象読者は以下のようになっています
- ふりかえりをやっているが、うまくいかない人
- ふりかえりのファシリテーションを学びたい人
- ふりかえりのいろいろな手法を知りたい人
- ふりかえりに興味がある人
1章 ふりかえりの種類
一言にふりかえりといってもその領域は様々です。
この書籍では
- ひとりのふりかえり
- チームのふりかえり
- プロジェクト・プロダクトのふりかえり
- グループ・組織のふりかえり
の分類を解説してくれています。
その上で、以降はチームのふりかえりについて触れています。
コンテキストが明確ですね。
ちなみに私はひとりの振り返りに関しては、
- タスク単位(すべてのタスクではない)
- 日次
- 週次
- 月次
で行っています。
3章 ふりかえりの3つの目的と3ステップ
「 立ち止まる 」。ここがふりかえり導入時の鬼門だと思いました。
始めたはいいが、ついつい目の前に忙しさを優先しつづけてふりかえりをやらなくなり、
結局生産性が落ち続けるというのはよくある話だと思います。
そこで、立ち止まることの必要性が語られています。確かに。
そして「 チームを成長させる 」。
全体最適を目指す際の具体例が図解つきで、とてもわかりやすく説明されていました。
目の前にある問題をただ解決していっても、最終成果物に与える影響が小さければ効果は低くなります。
ついつい、あれもこれもと場当たり的に対応しがちだと思いますが、全体最適を加味した課題選定が重要になります。
その前提としてメンバー全員が業務プロセスの全体を理解し、かつ、その構造や現状のボトルネックがいつでも確認可能にしておく必要があるように感じます。
書籍中でも紹介されている Value Stream Map などによる業務プロセスの見える化を先にやっておく必要がありそうです。
4章 ふりかえりにおける場作りとは
場づくりを 心理的な場づくり と 物理的な場づくり に分類して説明しています。
特に心理的な場づくりが気になりました。
ふりかえりの導入期に、全員がフラットな関係性で、言いたいことを言える状態を作るというのはかなりの難題だと考えています。
書籍でいうところの「前向きな対話」が可能な環境を作ること。
そしてそのための手法が以降の章で紹介されています。
まとめ
ふりかえりの関連要素の概要がわかりやすくまとめてありつつ、
どんな付箋が使いやすいか、というように実際に手を動かし続けている人ならではの細かなところのケアまでしてある良書でした。
ここで自分に置き換えて適用しようとすると、この書籍の責務外のところでモヤモヤするところがでてきてしまいました。
私が思うに、この書籍のスタートに立つまでに結構大きな障壁を乗り越える必要があります。
ここまで本格的な取り組みをするには、こういったノウハウを積極的に学び全体をリードしていく「ふりかえりエヴァンジェリスト」的な人が指名(自薦)されており、そのノウハウの習得に対して会社が支援を行い、かつ評価を行う土壌が必要に感じました。
それがない場合は、個人の熱によって個人的な時間と外部のコミュニティなどで学ぶことになると思います。また、このような前提において業務上も特別にその役割のための時間が用意されているわけではないので、兼務をしながらということになります。
その上でキャリアや評価に結びつかない場合はけっきょくその人材は流出することになり、組織内の取り組みは継続しないのではないかと想像しました。非公式な役割は一般的に業務上の評価に結びつきません。
また物理的な場作りとして紹介されていた内容に関しては、物品の購入・配置や業務のミーティング中におやつを食べている状態を許容するかどうかなど組織側の柔軟さが問われそうです。
このあたりの施策を行うには組織に根ざす根本的な問題を覆す豪腕(発言力、説得力、政治力)や、少しずつ成果を積み重ね成功をアピールしていくスタンスが必要そうです。
ふりかえりの必要性が大きいほど、こういった前提となる土壌が弱いケースが多いと考えられ、それを実際にうまく回していくための障壁が大きいことが想像され悩ましい問題だと思います。
理論上はこの本で紹介されているような手法が有効だということはずいぶん前から理解しているが、実際に導入していく権限を持っていない。巻き込もうとするがうまくいかない。
このような部分が障壁になっている人というのは、多くいるのではないかと思います。
ひょっとしたら、「ふりかえり読本 ふりかえりを導入する前提作り編」があるといいのかもしれませんね。
その中の選択肢には「ここまでやってだめなら転職」というのもあるのかもしれませんが。