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Employee Experience Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

1社員であるエンジニアにとっての採用参加の意味

社員の採用参加に関してちらほらと意見を見るような機会があり、言語化しようと思いたちました。

とても参考になる現場の声をまとめたしぶあつさんの note が以下です。

note.mu

ここで、社員の3割の方が採用への協力を「好き」とこたえているそうです。
逆にいうと7割は好きではないということです。
ちなみに、個人的な予想としては、しぶあつさんの所属組織はどちらかというと採用に対する意識が高い組織だと思っていて、その意味ではもっと厳しい状況の企業が多いだろうと想像しています。

仮に「好き」というのが

  1. 採用に参加することで個人が感じるメリット
  2. 採用に参加することで個人が感じるデメリット

1 - 2 がプラスになっている状態が「好き」だとすると、そもそも好きと思えるための

メリットの認知範囲が狭い

という仮説を思いつきました。
ここで、採用市場の背景と採用と組織と個人のつながりをまとめることで、採用に参加することのメリットを言語化します。

視点の話

参考情報になりますが、私は

  • 転職活動でかなり多くの会社様と組織づくりの視点でカジュアル面談でお話させていただいたこと
  • 今後組織周りのお仕事をしようとしていること
  • もともと CodeIQ の出題者をしていたこと
  • 現職でリファラル採用をしたこと
  • 現職で採用活動に関わったこと
  • 身近に人材界隈の業界のエンジニアさんがいること
  • 身近にシステム開発に関わる人事担当者がいること
  • 身近に 転職LT の主催者がいること
  • 身近に しがないラジオ のパーソナリティがいること
  • 身近に kiitok (キイトク) のキャリア相談者が2名いること
  • エンジニアの人材不足に関する研究論文を書いている学生の相談にのったこと
  • 転職相談にのることがときどきあるということ
  • 人の成長に関わる2つのコミュニティを持ち、その他にも類似領域に関わるコミュニティに関わっていて、「転職活動中、これから活動をするエンジニア」との関わりがそこそこ多いこと
  • Findy さんのオフィスにお茶をしにいったけど、 筋肉CTO とは話さなかったこと

など、HRに関わる要素と比較的多めに接してきた個人だと思います。

つまり、エンジニアの立ち位置を知りつつも組織づくりに思いを馳せて転職活動をしていて、さらに複数のHR界隈の人たちとやりとりをしたり、そのやりとりを横目でみた身として、木と森の双方から、なんなら更にその上から鳥の観点で、もしかすると筋肉の観点から見ることができるのではないか、ということから他の人とは異なる意見をまとめられるかな、と思いました。

エンジニア採用市場の状況

採用市場という言葉が嫌いな方もいらっしゃるようですが、他によい言い回しを思いつかないのでそのままにします。
特に「人間」を蔑ろにする意図はありません。

市場全体

まず、日本全体として労働人口が減少しています。
さらにそのなかでもエンジニアの人口は需要に比べて少なく、今後も大きく増える傾向にはなく、どんどん減っていくだろうと言われています。

IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 - 経済産業省

経産省の資料では 2019 年をピークに減少。2030年の中位シナリオでは不足数が 586,598 人になると試算されています。
東京ドーム約10個分です。(1回言ってみたかった)

顕在層と潜在層

現状のエンジニア採用市場において、顕在層はごくわずかです。

scouty さんの記事だと全体が 約72万人 で、顕在層は 約1万2,000人 ほどしかいません。
※近々社名を LARPAS に変更するようです。

年間の転職者が 約7万3,000人 とのことなので、顕在層は 1/6 しかいません。
その他は潜在転職層ということになります。

ちなみに、上記記事のように 2013年時点でも潜在層へのシフトの話はでていて、その際には顕在層は 2 割とされています。
直近は 72万人 のうち 約1万2,000人 ということだと約 1.67 割で、比率として減ってきているように見えます。

このことからリファラル採用等、潜在転職層を主軸とする方向に移行する採用方針は今後も続いていくようにみえます。
このあたりの話題は、先日の週刊ダイアモンドでも掲載されていました。

採用意欲旺盛な大きな企業が数百名・数千人規模で採用をする、ということを見かける機会もでてきたことを考えるとこの 1万2,000人 という数の少なさがわかります。

採用の方向性

こういった方向性を踏まえると、大きな方針として

という形になります。

逆に言うと一番厳しいパターンは

  • 顕在層向けの採用戦略のみで戦う
  • 組織内は改善しない

ということになります。特にブランディングの礎となる「よりよい会社」は一朝一夕にはできませんし、その評判が表に広まるのにもさらに時間がかかります。
異変に気づいて全く採用できなくなった頃には手遅れ、ということもあり得るのではないでしょうか。

ちなみに、従業員のエンゲージメントを継続測定し、よりよい組織の構築への助けとなる モチベーションクラウド (リンクアンドモチベーション社)の普及もエンゲージメントの重要性が広まる1要因になっていきそうです。

採用参加のメリット

さて、ここまでの材料を踏まえて個人から見た場合の採用の重要性を整理してみます。

組織力

システム開発を主軸に置く会社の優位性は、組織に所属する開発者の力によるところがかなり大きいのは想像できます。
つまり、その会社のビジネスがうまくいくかどうかは優秀な人材をどれだけ採用できているかどうか、ということになります。
これは、業績に影響してくるので、所属組織の安定性・売上・利益などに影響してきます。それは当然所属する個人の給与やボーナスに影響します。

知的刺激

直接関わる同僚に関しては、業務の中で明示的にも暗黙的にも知識の交換が行われます。優秀で多様な同僚が多ければ多いほど、一緒に働く個人の成長にポジティブな影響があります。
個人の能力は非公式なやりとり、雑談などの中でも培われます。

普段接する同僚を決めること

普段職場で働く上での満足度は上司や同僚など日々接する相手との関係性によるところが大きいと思います。
自分の日常の充実を左右する相手の選択に自分が関わるかどうか、というのは本人にとっての影響が大きいと考えられます。

このあたりに関心があるかたは、ダイナミックスキル理論が興味深いです。

まとめ

リファラル採用等、社員に採用協力を行う際はまずこの辺りの前提情報を共有したうえで、組織に所属する上で今採用がどれほど重要化という認識や、各社員にどのような利益をもたらすかという認識の共有・浸透が必要そうに思いました。
私は、デザイン関連に強くないのですが、ここにでてくるような情報を図にするとよりわかりやすくなりそうです。

その上で、その重要なミッションに参加してくれる社員に対して相応の評価なりインセンティブなりを設計してさらなる意欲を提供する、ということなのかなと思いました。

このあたりは、現時点では実際に担当したわけではないので転職後に手を動かしていきたいなと思っています。

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転職活動

この記事にあるように人事・開発の連携を含めた採用活動に課題を感じる企業様が多いという話を聞くので、例えば、人事・開発の間に入る役割から開始して、その後、学習する組織に関わる業務に移行する、などの働き方を提示してくださる企業様がありましたら連絡をお待ちしています。

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技術書典6にて新刊「挫折論への招待」を頒布します。お楽しみに。

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