今話題の 完全SIer脱出マニュアル 。
この本ができるまでと、このあととの世界に起こるであろうことについて考えてみました。
完全SIer脱出マニュアルにおけるSIerについて
書籍名では主語がでかいですが、この本が扱っているのはあくまで
劣悪な環境の SIer(およびその下請け)
に限定しています。受託開発そのものを非難するものではありません。
「SIerからWeb系へ」というキーワードがよく飛び交いますが、本質は「劣悪な環境から好ましい環境へ」です。
完全SIer脱出マニュアルができるまで
この本が高評価を得るレベルの質で仕上がっている結果になるには2つの起点があります。
著者である gami さんと zuckey さんが SIer に入社し、出会い、ともにつらみを感じ、脱出したこと。
もう一つは、その後 Podcast 「 しがないラジオ 」をはじめ、ゲストを多く呼ぶ配信スタイルになったことにより、多くの SIer 出身・脱出経験者の生々しい体験談を就職前まで遡って数多く聞いてきたこと。特に zuckey さんは編集作業の兼ね合いもあり、収録・編集を繰り返す間に何度も聞いています。
2017/03/12 に初回の配信を行い 2018/10/15 時点で 41 回のゲスト収録をしています。
すべてのゲストが SIer(とその下請け)に関わった人というわけではありませんが、
SIer(とその下請け) の闇に関わってきて、更にそこから脱出した様々な人の人生を1年半も聞き続けた人はそうそういません 。
これらの2つに gami さんと zuckey さんが「 楽しい場所で働く人が増えて欲しい 」と想ういう気持ちが加わってできたのが「 完全SIer脱出マニュアル 」ではないかと思っています。
なぜそれを第三者のあなたが語るの?
そんな疑問があるかもしれません。
それは、私がしがないラジオのリスナーが数名しかいなかった頃からのヘビーリスナーだからです。
すべてのエピソードを配信された当日か翌日までにはきいています。
SNS での普及活動に熱心過ぎて自動 RT Bot 疑惑が発生しています。
なんなら 出演もしています 。
七次請負を始めとした闇環境にどっぷり浸かって人生の10年ほどを台無しにした私としては、 gami さん、 zuckey さんと同様に「 楽しい場所で働く人が増えて欲しい 」と想ういう気持ちが大きいです。
このあとの世界に起こること
しがないラジオの持つ影響力
しがないラジオの影響を受けて、SIer(もしくはその下請け)を脱出する決意をし、
実際に脱出した人は少なからずいます。
しがないラジオのゲストには有名な人だけではなく、身近な普通のソフトウェア開発者やインフラエンジニアが多く出演しています。
そこで共感を得るという感想を多く見ます。
自分と近い境遇の人には共感しやすいですよね。
完全SIer脱出マニュアルがもつであろう影響力
おそらく、このあと完全SIer脱出マニュアルを読んで実際に転職を成功させる人が出てくると思います。
その際に、SNSなりブログでその事実が広まると思われます。
また、転職した人の職場や同職の友人にもその事実が広まります。
それをきいた人はさらに・・・
しがないラジオにゲスト出演した身近な存在に共感して心動かされた人がいるように、
完全SIer脱出マニュアルを読んで実際に転職を成功させた身近な存在に共感して心動かされた人が出てくる。
そんな予感がします。
そしてその母数が大きければ大きいほど波紋の広がりは・・・。
ひよこの大波に乗りそこねた人への助け舟
ひよこ大佐のTwitter転職が記憶にあたらしい方も多くいるのではないかと思います。
この影響で、 #hiyokonitsuduke
で転職ツイートをするソフトウェア開発者・インフラエンジニアが大量に発生しています。
この波にのってうまく転職できた人と、現在も転職活動中の人が多くいると思います。
完全SIer脱出マニュアルは、この「現在も転職活動中の人」がうまく転職するための背中を推してくれる教科書でもあります。
闇の中の光
闇に包まれた環境に埋もれる優秀な人というのがけっこう存在して、
本当ならよりよい環境で健康的に、楽しく、よりよい待遇で働けることを知らずに浪費していることがあるそうです。
これは体験からも存在を把握していますし、伝聞からも聞いています。
例えば、ベンチャーのリードエンジニアをできるようなレベルの人が、外の世界の情報を知らないがために受託開発の下請けで薄給で長時間労働をし続けている。そんな事実がまだまだあるそうです。
少しでも多くの人が、闇を抜け出そうと奮闘している事実や、闇を抜け出して楽しくなった事実を表に出し続けたら、闇の中にとどまっている人に届く可能性が増してくるのではないかなと思います。
まとめ
個人レベルでも人生は楽しく、健康的で、生産的で、充実していたほうがいいと思っていますし、
例えば日本という国レベルで見ても、そういった環境にいる人が増えたほうがよりよい未来になるはずです。
今後の日本は、労働人口が減少するため生産性の高い仕組みが必須になります。
つまり日本の成長には IT 業界の進歩・発展は欠かせません。
そのためには、 IT 業界が生産的で創造的で楽しく働ける場であり、技術を伸ばしていきやすく、それが評価につながっていく環境である必要があります。
そう考えると、闇から光へ行動を移す転機となる存在は後押ししたくなって仕方がありませんし、その先には日本の明るい未来がつながっていると言っても言い過ぎではないのかなと思っています。
この本が現状の多重請負構造という ダムにあいたアリの穴 になるかどうかは、
このあと読んだ人の行動とその広がり次第かも、と妄想しています。
やたらと無責任に他人の転職を煽りたいわけでもなく、とはいえ、よりよい環境に行けることが明らかな人や、健康や生命の危険に直面するような環境で働いている人が抜け出すきっかけは少しでも減るとよいな、この本は少なからずそのきっかけになりそうだな、と思ったのがこの記事を書いた理由です。
重ねてになりますが、現在受託開発の現場で「楽しく」「充実して」仕事をしている方を貶める意図はございません。
伝言
gami さん、 zuckey さん何か認識齟齬があったらお知らせください。修正します。