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おじリーグに見るアンラーニングと説得スキル

おじリーグをご存知でしょうか?

おじリーグそのものは今回の記事の主題ではないので、ざっくりと説明します。 おじリーグは、格闘ゲームストリートファイター5」における、おじさんプレイヤーが集まった対戦イベントです。このイベントはプライドをかけた格付けバトルであり、最下位は絶対に許されないというプレッシャーの中で戦うものです。

2023/5/7に第5回のおじリーグ開催されることになり、出場する「おじ」たちは練習に勤しんでいます。 出場者たちは業界関係者かその友人のため、練習のためのスパーリングパートナーとして、普段交流しているプロのプレイヤーたちが駆けつけるという状況です。

そして、今回の話はおじリーグの出場者である「ミートたけしさん」(以降ミートさん)がスパーリングパートナーであり、プロプレイヤーである「どぐらさん」と対戦する中での出来事です。
ちなみにミートさんは著名な音楽家(ベーシスト)川村竜さんなのですが、この記事では関係ないので特に掘り下げません。

アンラーニングの対象

ミートさんは、コーディーというキャラクターを使っています。 ストリートファイター5では、VトリガーとVスキルというシステムがあり、それぞれ2種類の技を選択することができます。 基本的にコーディはVスキルはクライムスウェー、Vトリガーはサイドアームが圧倒的に強く、このキャラの強さを支える要素の一つです。

一方で、ミートさんはVスキルはダブルキック、Vトリガーはダーティーコーチを愛用して使い続けています。勇者の剣と勇者の盾がある中で、鋼の剣と鋼の盾を使うような選択です。

※実際は対戦キャラによってVスキル、Vトリガーを使い分ける場面もあり、状況によって強さは変わりませんがこの記事の主題では無いので大雑把に説明しています

どぐらさんがアンラーニングさせたい動機

どぐらさんはミートさんを強くすることで、おじリーグが接戦になり、より盛り上がるようにするのが目的です。 どぐらさんはプロなので、Vスキルはクライムスウェー(通称スウェー)、Vトリガーはサイドアーム(通称ナイフ)にしたほうがミートさんが確実に強くなると考えています。

ミートさんがアンラーニングしたくない動機

ミートさんは自身のVトリガー・Vスキルの選択にこだわり、愛着があり絶対変えたくないと考えています。
過去にも他の人達に変更の提案をされたことがあるようですが、提案されるだけで不機嫌になるほどです。

その他の前提

  • おじリーグ本番向けのスパーリング目的のため、どぐらさんはメインキャラではなく、おじリーグで他のプレイヤーが使用するキャラを使ってミートさんの練習になるようにしています

アンラーニングに至る道

作戦1 - ボコボコにして使用動機を喚起する

どぐらさんは、スパーでミートさんを徹底的に倒して「ナイフ・スウェーを使われてたら負けてました」と伝えることで、これらを使う動機を持ってもらうという作戦を立てました。

結果は失敗。

どぐらさんが普段使っていないキャラでスパーしていることもあり、負けが込んでしまい説得に至ることができず。
逆にミートさんが今使っているVスキル、Vトリガーならではのいいところを見せる部分もあり、なおさら説得しにくい状況になってしまいました。

作戦2 - 同キャラで直接必要性を伝える

同キャラでナイフ、スウェーを使い、その強さを見せつけつつ食いつかせる作戦です。
勝つことはできますが、説得には至りません。

作戦3 - 最強キャラで必要性を伝える

配信を見ていた視聴者からどぐらさんへ「ルークはどうか?」という提案がでてきました。
ルークは現在最強ランクとされるキャラクターの1人であり、おじリーグの参加者の中にもルーク使いがいます。

最強キャラで圧倒することでナイフ・スウェーの必要性を伝える作戦です。 そして、ルークでミートさんのコーディーをボコるどぐらさん。

ここでついに不動のミートさんの心が動きます。

助言を求めるミートさん。

まずはミニマムでナイフのみをすすめるどぐらさん。

しかし、どうしてもナイフに変えたくないと言うミートさん。

もうひと押し!ということで「ぼくのルークと対戦するときだけでいいから、ナイフを使ってみませんか?その他は今まで通りでいいですよ」と伝えるどぐらさん。

ここでミートさん陥落。

次の試合でナイフを選んだミートさん。

数試合を経てナイフの強さに驚くミートさん。「ナイフつええ!!」と歓喜

これをみて「嫌いな子に人参食べさせた~!」と喜ぶどぐらさん。

このあと、ポジティブな経験によって、ミートさんはナイフだけではなくスウェーまで選択するのでした。

ポイント

  • 最初からどぐらさんは正論による説得ではなく「ナイフ・スウェーが必要になる」という理由づくりからアプローチしている
  • 失敗したら終わりではなく、手を変え品を変え、成功するまで試行錯誤を繰り返している
  • 相手が必要性を実感して心が揺らいだところに、相手が受け入れやすいように最小限の提案をしている
  • 提案を通して「実際にナイフを使って、ナイフの強さを実感する」という体験を通して利点を実感してもらっている

このエピソードは仕事に置き換えたら

  • 古い仕事の仕方にこだわって、新しい方法を頑なに受け入れない人に新しいよりよい方法を受け入れてもらう

という話にあたります。どぐらさんは組織を変化に導くチェンジ・エージェントの才能がありそうです。
アンラーニングを促す説得スキルです。

動画で実際に確認したい人向け

まとめ

おじリーグに見るアンラーニングと説得スキルについてまとめました。

なお、2つ目の動画のオチにもありますが、数日後にミートさんはナイフから元のVトリガーに戻したようです。
アンラーニングからの定着の難しさまで学べる出来事だったとさ。