複数主体が別々の工程を担当するような仕事に関る情報がタスク管理ツールや情報共有ツールや振り返りによって
管理されている状態と、そうではない状態が各個人の成長機会や製品の改善機会にどのような影響をあたえるかついて考えてみました。
サンプルケース
- 部門Aが部品aをつくる
- 部門Bが部品bをつくる
- 部門Cが部品aと部品bを組み立てる
- 部門Dが完成品を売る
サンプルケースとして、上記のような業務フローになっているものとします。
この製品製造の特性として
- 部品aと部品bの質は部門Cの組み立てに影響を与える
- 部品aと部品bの質は部門Dの販売に影響を与える
- 部門Cの組み立ての質は部門Dの販売に影響を与える
このような業務フローと特性の製品をつくる業務について考えてみましょう。
管理されていない状態
各部門が以下のような状態で運用されているものとします。
- 自部門の範囲外の業務についてはブラックボックス
- 最終的な成果に対するフィードバックは部門Dだけが把握している
部門A,B,Cの質による影響は、より後半の工程で明らかになるため、
各工程の部門は自分たちの工程の質は判断できません。
そして後工程の部署は前工程の部署の質が低さに対して不信と不満を抱きやすくなります。
また、前工程の担当者は自分たちがいい仕事をしたのか、そうでないのかの判断材料がないため、
満足感を得にくくなります。基準がわからないためよりよくする動機も低くなります。
つまり
- 部門A, B, Cは自分たちの成果物の質が分からないので改善機会を失っている
- 部門A, B, Cは結果が分からないので完成品に対して他人事になる
- 部門Dはいつまでたってもよくならない部門A, B, Cの質に対して不満を持ち続ける
ということになります。
改善機会を失っているということは、よりよい製品をつくる機会を失っていることであり、
部門A, B, Cに所属する人々の成長機会も失われていることになります。
完成品に対するフィードバックがないため、顧客への貢献を実感する機会がなく、
よりよい仕事をする動機の一つが失われます。
顧客志向でよりよい仕事をしようとしている人は、このような組織から去る可能性が高いため、
問題が顕在化しにくいと考えられます。
逆に「仕事とは頼まれたことを頼まれた通りにやることだ」という視点の人にとっては
特に違和感がないため、そういった人々からも問題が顕在化しにくくなります。
管理されている状態
各部門が以下のような状態で運用されているものとします。
- タスク管理ツールによって、今どの部署のどの工程が行われているかいつでも全員が把握可能
- タスク管理ツールと情報共有ツールによって自部門以外の活動がホワイトボックスになっている
- 顧客からのフィードバックは情報共有ツールで共有されている
- 工程全体をまたぐ視点での振り返りの実施によって全体の問題を把握可能
状況・情報が共有されているため、自分たちの成果物の質が確認可能になっています。
つまり
- 全部門が自分たちの成果を把握し、改善機会を得ている
- 全部門が自分たちの成果が顧客に与える影響を把握しているため完成品に対して自分事になる
ということになります。
改善機会を得ているということは、よりよい製品をつくる機会を得ていることであり、
また、全部門に所属する人々の成長機会が得られてることになります。
また、完成品に対するフィードバックがあるため、顧客への貢献を実感する機会があり、
よりよい仕事をする動機の一つが得られます。
※便宜上、ツールに着目した記載になっていますが、ツールを導入する目的を踏まえた上での
意思決定がなされているものとします。
まとめ
仮に「管理されていない状態」の組織に所属しているならば、
可能な範囲で改善を試みつつ、できない範囲についてはせめて
他部門との交流などを通して自身の成長機会のための情報源を確保するとよさそうです。
長期的には改善を試みて失敗したのなら、「管理されている状態」の組織にいったほうがよさそうです。