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Employee Experience Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

ネガティブ・フィードバックが実を結ぶまでの遠い道のり

ネガティブ・フィードバックは相手の改善のために不足点、要改善点を指摘する行為です。
そのゴールは、実際に相手が改善することです。ネガティブ・フィードバックというスタートから改善というゴールまでは1ステップではありません。その要素を細分化して、中間にある障壁を整理します。

フィードバック

  • ネガティブ・フィードバックの送り手側に必要とされる要素
    1. ネガティブ・フィードバックが問題を適切に捉えているか?
    2. ネガティブ・フィードバックが問題を適切に伝えているか?
    3. ネガティブ・フィードバックをする相手から信頼されているか?
    4. ネガティブ・フィードバックが相手が受け入れやすいメッセージになっているか?
  • ネガティブ・フィードバックの受け手側に必要とされる要素
    1. ネガティブ・フィードバックをくれた人と内容を切り離せるか?
    2. ネガティブ・フィードバックの適切さを検討しなおせるか?
    3. ネガティブ・フィードバックの内容を破棄する前に試せるか?

送り手側

問題を適切に捉えているか?

そもそも指摘している問題そのものが適切ではない場合。フィードバックする人は問題と捉えているが実際は問題ではない。
これは逆に受け入れてはいけないものになるので、受け手からみると、その指摘が正しいかどうかを検討することで防ぐ必要がある。

問題を適切に伝えているか?

問題は適切に捉えているが、それを適切に言語化して伝えることができていない状態。例えば、

  • 自分目線でしかわからない前提が省略されている
  • 具体例がなく、相手からの咀嚼が難しい
  • 指摘内容が過去にさかのぼり過ぎていて相手が思い出せない

などは理解を妨げる伝え方だろう。
伝えている側は適切に伝えていると思っている状態なので、「なぜ相手は自分の親切な指摘を受け入れないのだろう?」と疑念を持つことになりがち。

相手に信頼されているか?

関係性と切り離してフィードバックを受け入れられる人ばかりではない。そのため、基本的にはフィードバックを有効に受け入れてもらおうとするならば関係性が良好であるほど成功率があがるだろう。
関係性が悪いだけではなく、普通でもなく、いい必要がある。そのくらい他者からのフィードバックを受け入れる意思決定というのは一般にハードルが高い場合が多いと考えている。

相手が受け入れやすいメッセージになっているか?

指摘内容が適切だったとしても言い方が乱暴で攻撃的だった場合、相手は受け入れを拒む可能性があがるだろう。
SBI モデルを意識したフィードバックのように受け入れ易い表現を意識すると成功率があがる。

受け手側

人と内容を切り離せるか?

仮に苦手・嫌いな相手からの指摘でも、対象の問題にフォーカスして受け入れ価値の有無だけで判断できると成長の機会を増やしやすい。
そのため、誰からもらったフィードバックなのかという点は三歩歩いて忘れ、問題のみにフォーカスできると好ましい。

適切さを検討しなおせるか?

相手の問題提起や提示してきた改善案は無条件に受け入れてはいけない。それ自体が間違っている可能性がある。
そのため、批判的思考で受け取った情報の適切さを検討する必要がある。場合によっては、追加で判断のための情報を集めにいくことも必要になるだろう。

内容を破棄する前に試せるか?

フィードバックとして受け取った内容の適切さを判断しきれないとき、まずは小さく試すことで有効性を確認すると当たりのフィードバックを試さずに破棄してしまうことを防げる。

まとめ

フィードバックの送り手、受け手それぞれの要素の組み合わせで実際にフィードバックが受け入れられ、改善アクションにつなげ、最終的に改善されるところまで到達するかが変わる。
仮にいくつかの組み合わせについて考えてみる。

送-適切な内容 送-適切な伝え方 送-信頼有無 送-受け入れやすい伝え方 受-人と内容の区別 受-批判的に検討 受-試行
例1 不適切 適切 信頼有 適切 区別可能 無検討 試行しない
例2 適切 適切 信頼有 攻撃的 区別不可能 検討 試行しない
例3 適切 不適切 信頼無 攻撃的 区別可能 検討 試行する

例1はそもそも内容が不適切なのだが、不適切な内容を正確に・受け入れやすい表現で伝え、信頼関係もある。
その上で、受け手が無検討で受け入れるため不適切なフィードバックを正解として受け取ってしまうケース。

例2は適切な内容を正確に伝えていて、前提の信頼関係もあるが、伝え方が攻撃的なため、人と内容の区別が苦手な相手には受け入れられないケース。

例3は伝えている問題は適切だが、伝える内容が不正確で、攻撃的。しかし、受け手が人と内容の区別ができ、自分で問題を批判的に検討し、試行できるため問題が解決するに値するかどうか自己判断できるケース。

送り手がフィードバックの成功率を高める努力を怠ったとしても、受け手のレベルが高ければそれでもワークするケースもあるが、たまたま受け手のレベルが高い環境にいた人がそうでもない場にうつったときに急に受け入れられなくなるということはありそうですね。逆に、受け手からみて送り手のフィードバックスキルはコントロールしにくいので、相手を問わずに糧につなげるようにしたいなら受け手としてのレベルを上げていくことが好ましくなります。