技術書典6にて購入した、ふりかえり読本 学び編を読みました。
技術書典5のふりかえり読本 場作り編に続いての購入です。
ふりかえり読本 学び編 とは?
「ふりかえり読本 学び編」はふりかえりを軸に日々の活動からの学び、気付きを引き出すための本です。
ふりかえりはどのようなことを目的にしたどのようなもので、どのような分類があって、その分類ごとに用いるアクティビティにはどのようなものがあるか、ということを同人誌とは思えぬ分厚さでまとめてくれています。
詳細は他の方の感想ブログもあるし、「ふりかえりで個人的成長を加速したいという方は気になったらぜひ購入して、中身を読んでください」、という思いもあるので思い切って省略して、個人的に気になった概念を取り上げます。
一応ちょっとだけ触れておくと個人的にはコルブの経験学習とか、各期間ごとのふりかえりとか、個人としてのふりかえりの習慣と近いことがかかれていて答え合わせができた気分で嬉しかったです。
チーム、組織のアクティビティについてはリファレンス的に今後転職したあとの生活で参考書として活用できそうです。
気になった点 - Developmental Relationships
70:20:10 の法則の 20 % に関する説明の詳細が気になったので、英語情報を確認したところ Wikipedia で
20% from developmental relationships
のように記されていました。
Developmental Relationships についてさらに調べたところ、日本語だと「関係発達的支援」と訳されるようなもので、
によると、
English | 意訳 |
---|---|
Express Care | 気にかけていることを表現する |
Challenge Growth | 成長への挑戦へ後押し |
Provide Support | 支援の提供 |
Share Power | 力を分け与えること |
Expand Posivility | 可能性の拡大 |
のような要素からなるようです。
役割としてはコーチ、メンターの存在が良い例になりそうです。
その人の周りにこのような環境があると好ましい成長を後押しする。
それは全体でいうと 20% 程度の要素になる、というのが 70:20:10 の法則での話になります。
なお、 70:20:10 の法則自体、懐疑論もあるようです。
70:20:10 の法則自体は、古いのと科学的根拠の不足や、そもそもインターネット以前の時代のものであることなどによる批判があるのか。
— てぃーびー-挫折論への招待著者 (@tbpgr) 2019年5月2日
これに限らず昔の理論を参考にする場合は、現在の世界との差異を気にする必要がありますね。https://t.co/PORS1MliTA
ちなみに、 70 % である実際の挑戦・行動が重要というのは納得する一方で、 20 % とされている Developmental Relationships は個人の限界を越えるきっかけや機会をもたらす重要なもので、挑戦・行動と相互的に組み合わさって相乗効果がでそうなものに思いました。
このあたりは計画的偶発性理論、最近接発達領域(Zone of Proximal Development - ZPD) の概念と組み合わせて考えるとそんな感じがしてきます。
計画的偶発性理論 は、キャリアの成功は偶発性に支えられているので、偶発性を引き寄せるようなふるまいが重要である、という理論です。
この文脈において、良質の機会をもたらしてくれる身の回りの環境 = developmental relationships の重要度を感じます。
計画的偶発性理論はキャリアの成功の話ですが、キャリアが成功していけば当然より良質の機会に恵まれて能力を伸ばしやすくなります。
最近接発達領域 は一人ではできないが、他者からサポートを受ければできる領域のことです。
これも周囲によりよい影響を与えてくれる人がいるほど能力を実際の行動を通して伸びる能力もより一層大きくなるように思えます。
関連資料
- 自閉症スペクトラム障害児への関係発達的支援による集団支援と教育実践 : 「トータル支援」を通した「過ごす力」と「向かう力」を育む支援論: University of the Ryukyus Repository
- What the heck are “Developmental Relationships” - Aspen Strong
- The Developmental Relationships Framework - PDF
まとめ
ふりかえりについて学びつつ、 Developmental Relationships の概念に出会うことにできてホクホクなわけですが、実はもう一つ気になるポイントがありました。
ふりかえりの目的は「個人・チーム・組織」がふりかえりから学ぶこと。
言い換えると、ふりかえることでよりよくすることが可能な箇所を発見し、選択し、実際によりよくすることです。
ここで書籍「イシューからはじめよ」を思い出しました。
ふりかえりに慣れてくると大小様々な「要改善箇所」がでるようになります。
ここで、発生するのが「要改善箇所をすべて実行する時間はない」という事態です。
ここで手当たり次第に量でカバーするような選択から質を上げる方向に向かい、結局価値のない仕事に時間を使うことになる「犬の道」を選ばず、最も重要な取り組む価値の高い「イシュー」からはじめることが大切な気がするのです。
今最もインパクトがある重要なイシューは何か?
まずはそれを選ぶ事が重要になりそうな気がします。
もちろん、そこに迷っていて時間ばかりかかってなにも着手しないよりは、イシュー度が低くてもひとまず着手したほうがいいですし、特にふりかえりをはじめたばかりの頃は成功体験を積む意味でも軽めのものの数をこなすことも大切そうです。
ただ、それは裏を返すとその段階ではその人の成長にとって、まずは小さな成功体験を積むことの「イシュー度が高い」と考えることもできます。
そのため、ふりかえりの費用対効果(時間対効果)を上げるには取り組む対象の全体像とその中の現状・理想をもとにした優先順が明確になっていく必要がありそうで、そのためには
- 問題解決
- システム思考・真因分析
あたりの知識・経験を併せ持つ必要があるのでは、ということを思いました。