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Employee Experience Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

自走する人について『生活者の「行動の習慣化」モデル』を元に考えた

「自走出来る」というのは, 受動的にプログラミング教育を学ぶだけでなく, そこから疑問点, 課題を見つけて, 周囲の力を借りたりしつつも解決出来る

という話題がありました。

では、この自走する力というものは何でできるのでしょうか?
ここで大きくわけて2つの要素を考えました。

1つ目は 問題解決能力 です。
問題解決能力は自らの頭で問題を解決していく実践とふりかえりを繰り返す中で経験知を増やしたことよって培われるのだと思います。
また、問題解決自体への知識を深めると自力のみで問題を解決するよりもはやく問題解決が上達するのではないかと思っています。
この記事では問題解決能力についてこれ以上扱いません。

2つ目は 習慣化力 です。
そこで習慣はどのように作られるかということを調べていたら 博報堂行動デザイン研究所と東京大学先端研の「行動の習慣化モデル」 という資料をみつけました。
この記事では、この資料で紹介されている習慣化の段階と「快・近・効(カイ・キン・コー)」という要素について考えてみます。

注意事項

この記事は、元記事の背景にある「プログラミング教育」が論点ではなく、「自走する人」が論点です。

習慣とは

心理学における習慣とは

反復によって習得し、少ない心的努力で繰り返せる、固定した行動のこと

習慣化の快・近・効(カイ・キン・コー)

によると、習慣を学習期-継続期-離脱期の3つに分けた場合、学習期と離脱期には

内容
快感 楽しい、気持ちいい、自分の可能性が拡がる、等
近さ・買いやすさ 自宅から近い、価格が安い、自分にカスタマイズされている、等
自己効用 リフレッシュできる、(髪が)さらさらする、自分の年齢にあっている、等

が重要とのことです。

表は、前述の記事からリンクされている PDF の P3 から引用です。
元の調査対象が「習い事、コーヒー、ノンシリコンシャンプー」になっているため自己効用の例が具体的な内容になっていますが、より一般化して捉えるならば「自己の効用を実感できる。ポジティブなフィードバックがある」ということでしょう。

つまり、これらを習慣化の学習期と離脱期には実感できる状態が重要ということです。
そして、ここで大きく サンクコスト を作ることで、継続期において「せっかくここまでやったので、ここでやめたらもったいない」という状態を作ることが重要になります。
逆に言うと、これのサンクコストは、この習慣をまた別の新しいしゅう感に変更する際には大きな障壁にもなりますが。

プロゲーマーからみる習慣化の快・効(カイ・コー)

少しずつ話題が増えてきた E-Sports の中でも注目度が高い「ウメハラ」さんの配信動画です。
バージョン変更に伴ってメインキャラクターの変更を視野に、今まで使っていなかった新たなメインキャラクラー候補を少しずつ実践で練習している様子です。
小さなころからゲームをプレイし続け、今やそれが仕事になっているわけですが、強い技を発見し、その技の強さを実践で確認し、非常に楽しそうにプレイしている様子が確認できる動画です。

これは

  • 強い技を発見したこと、実践であてることへの 快感(楽しさ、気持ちよさ) を実感していることが確認できている
  • 実践で大きく役立つ武器を手に入れたことにより、新たに覚え中のキャラクターでの対戦が強くなっていく 自己効用感 を味わっている

という 「快・効」 の要素に見えます。
※配信なので、あえてテンションを高めてる面もあるとは思いますが。

これは、格闘ゲームをやったことがある人にはわかるのですが、一度徹底的に使い込んで強化したメインキャラクターから新たに他のキャラクターに乗り換えるのは、そこそこ習慣化に失敗しやすい行為です。
最終的にプロの仕事として大会で勝利するために、より勝ちやすいキャラクターに変えるという強い動機はあるものの、その過程においてもやる気を下げずに打ち込めるのは「快・効」を感じてる恩恵がありそうに見えました。長期的な動機よりも、今この瞬間を楽しんでいる感じがしますよね。

このブログはシステム開発者が多いと思うので、例えば エディタの乗り換え などに置き換えて考えてみます。
エディタを乗り換えた際に、新たなエディタ特有の機能への驚きや、実際にそれを使っていることにより以前のエディタよりもはかどっている実感があると、新たなエディタの利用が習慣化しやすそうに思います。

まとめ

なぜ快・効(カイ・コー)が重要かを考えてみます。

学習期においてぶつかる壁を壊すだけのエネルギーとなるからではないかと予想しました。
快・効の助力を得ることで壁を壊す際に低下するエネルギーの低下よりも続けていくエネルギーの方が上回ることによって継続するのでは、と考えました。

プログラムっぽく書くとこうでしょうか。

// ループ内は習慣化している状態
while (「快・効による正のエネルギー」 > 「壁による負のエネルギー」) do
  アクションを実行する
  正負のエネルギーが発生するイベントによる正負の増減
end

そして、自走が何かの領域の熟達に成功している状態だとすると、自己効用感を感じている状態は熟達に成功している状態のはずです。
結果として、自走の要素の一つである継続が達成されるのではないかと考えました。

となると自走が上手い人は「快」を作り出し「効」を実感することに優れていると考えることができそうです。

予想されるところでは、行動の結果を何らかの方法で「可視化」することでフィードバックを得やすくして、自己効用感を得やすくするという方法が有り得そうに思います。
快感を作り出すにはゲーミフィケーションのようなものを作り出すことによって、楽しさを生み出すことです。例えば勉強の際に友達とクイズ形式で学び合う、という方法や最近だとプログラミング学習そのものをゲーム化した学習サービスなどがありますね。

方法は人それぞれありそうなので、習慣化が得意だと考えている人の「私が快・効を実感する方法」というのをいろいろと読んでみたいな、と思いました。

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