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Employee Experience Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

組織における手段としての振り返りと、その目的の関係を整理する

なぜ振り返りが必要になるか?
組織における手段としての振り返りと、その目的の関係を整理します。

目的

新しい製品を生み出す。
製品を改善する。
製品を作る過程を改善して利益率を上げる。

営利の組織が継続する上で必要なのは
顧客に価値を生み出し、その結果得た対価で従業員を豊かにし、組織を更に豊かにすることです。
※株の話はおいておく

そのためには市場の変化に応じてニーズに合った価値を創造したり、
技術や手法の進化などを活用して、より安価に価値を作る方法を作り出すことで利益を増やす必要があります。

新規の創造・業務の改善に共通で必要となるものがあります。

それは 変化 です。

今までと同じことをしているだけでは新たな創造はできませんし、改善もできません。
そして、あえて主語を大きくしますが日本の組織は変化に対して拒絶的なケースが多いと思います。
つまり、変化を起こせずに悩んでいる人や、変化を諦めた人はとても多いと考えています。
これは個人の経験と、インターネットなどで見かける声を元にした個人の印象です。

変化の実現に必要な要素

新しい価値・業務の改善を生み出す変化を実現するにはどのような要素が必要でしょうか?

  • 問題の現象を発見すること
  • 現象から真因を把握すること
  • 真因を解決するための解決策の仮説を立案すること
  • 仮説を検証を繰り返すこと

このような要素が必要になります。

さらに問題の発見や真因の把握のためには、
製品を取り巻く構造、人の行動・感情・マインドなどへの理解と意識付けが必要となります。

仮説の立案についても、与えられた真因やその周辺情報をもとに
仮説を導き出す洞察力が必要となります。洞察力に必要となるのも問題の発見に必要となるのと
同じようなものになります。

変化の要素と振り返りの関係

新たな価値の創造と利益の増大のためには変化が必要で、
その変化には様々な要素があることがわかりました。

これらの変化を起こすために必要となるのが振り返りです。

変化の要素 振り返りの効果
現象発見 ・振り返りによって忘れず発見
・発見の機会を用意
真因発見 ・振り返りによって観察力、洞察力を強化
・マインドの変化によって真因を受け入れる
仮説立案 ・振り返りによって観察力、洞察力を強化
仮説検証 ・振り返りによって効果測定とさらなる改善をする
・マインドの変化によって変化を促す施策に対して前向きになる

振り返りの効果

変化の要素と振り返りの関係をもとに、振り返りの効果についてもう少し詳しくふれていきます。

記憶力を信じない

問題の現象を発見するには定期的に問題を振り返る必要があります。
人の記憶力には限りがあるので。
各メンバーについては、 行動探求スキル を上げておくことでさらに質の高い
振り返りができると思われます。

真因を発見する

現象から真因を把握するためには定期的に振り返る必要があります。
現象と真因の関係は短期では把握できない可能性があるので長期の振り返りをして、
その結果を記録しておくことで、参照可能にしておく必要があります。

例えば付箋を使った物理ベースの KPT にはその歴史の記録に関する取り決めは無いと思いますが
過去にどういった問題を扱い、どういった意思決定をしたかは必ず記録に残したほうがよいと考えています。
(実際は写メなどにより履歴化しているケースが多いのかな?)

また、振り返りの際は想起の材料となる資料などを即確認できるような
環境にしておくことが好ましいように思います。
具体的にはナレッジベースに必要な情報が蓄えられていて、振り返り中に
即確認できるような事を想定しています。
そのため、より鋭い洞察を生むにはその材料となる出来事のや担当者が発見した
現象や感情の記録がナレッジベースに残っているとよいと考えています。
個人の記憶ベースのみに頼るのは心もとないので。

真因を発見するためには少なくとも一人は他のメンバーに
システム思考のような全体思考の知識を持っていて、アドバイスできる必要がありそうです。
いないならチャンスです。挙手して覚えましょう。

観察力・洞察力を強化する

ものごとの原因や結果に対する観察力・洞察力は
知識だけではなく実体験を元に経験値をためることによって高めることができます。
そのためには実際に取り組んでいるものごとから経験を得ることが必要です。

マインドの変化を生む

関係者が真因を認めて、心から変えたいと思い実際に変化のための行動をするためには
その真因が起こっていることに納得する必要があります。
よく出てくる言葉としては「 問題と私たち 」ということになりますが、他責傾向があったり、
そもそも物事を現象のみでとらえていると構造の中の1主体としての自分が問題になっていることを認めにくいです。
ここで自分が問題になっていたとしても、それは構造によるものであり、
個人によるものではないということを振り返りを通して理解していけるとよいでしょう。
そのためにはお互いの考えていることを隠さず話し合って、合意していく必要があります。
対話 を繰り返すことで 心理的安全性 を作り出すということです。

仮説検証を繰り返し成功に導く

大抵の場合、価値が高い仕事というのは明確な正解はありません。
仮説を作っては、それが正しいか繰り返す必要があります。

仮説が正しかったか確認するためには振り返りが必要です。
あてずっぽうの仮説を実施しっぱなしにしていては経験値はたまりません。

継続的な振り返りによって組織の変化する力とその成果としての
価値の創造と利益の増大の効果が高まります。

まとめ

振り返りはこのような多数の要素を継続的に強化してくれる手段というわけです。
これは以下の様なものを強化してくれていると考えられるでしょう。

  • 個人の知識・能力
  • 個人の変化許容度
  • 個人の問題解決能力
  • 個人の集合としてのチームの知識・能力
  • 個人の集合としてのチームの変化許容度
  • 個人の集合としてのチームの問題解決能力
  • 相乗効果を発揮するチームとしての洞察力

ひとまとめに言うと「組織の学習能力」を強化してくれるということです。

そして、これらは新たな製品の創造や
組織の製品を作り出すプロセスの改善により競争力の源泉となっていくわけです。

曖昧になりがちな振り返りフレームワークを使った
定期的な振り返りの運用ですが、このあたりのバックグラウンドをメンバー全員で共有し、
お互い理解した上で取り組んでいると齟齬が少なくなるのではないか、と思いました。