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意見の裏にある解釈と事実を引き出す

なにか意見をきいたとき、その裏には以下のように事実とそれに対する解釈が存在する場合と、事実に基づかない解釈が存在する場合があります。

しかし、実際に人とやりとりをする上で、その意見の前提となる事実とその事実に対する相手の解釈まで確認することを必要に応じてできている、という方ばかりとは限らないのではないかと思います。仮に確認しない場合は、受け手が相手の解釈とその裏にある事実を推測することになります。この推測対象が、とてもシンプルで誰でも間違えようのないようなものならいいですが、複雑なお題についてやりとりしているとそうもいきません。
この場合に、意見の裏にある解釈と事実を引き出す必要があります。そこで

  • 事実、解釈、意見とはそれぞれなにか?
  • 意見のみで判断して問題が起こる例
  • 解釈とバイアス
  • 事実と解釈の引き出し方

についてまとめます。

前提

前提として、まずは「事実」「解釈」「意見」とはなんなのかを整理します。

事実とは?

事実は実際に起こったことです。存在することや状態。個々人で認識がずれません。

例 - 「この人形は50cm」

解釈とは?

解釈は各自が自己の価値観をもとに物事を捉えたものです。事実に基づく事もあれば、基づかないこともあります。また、個々人で認識がずれます。

例 - 「この人形はかわいい」

意見とは?

解釈をもとにした、対象に関する自己の考えです。

例 - 「この人形を買うべき」

意見のみで判断して問題が起こる例

例えば、 A さんが「今日からシステムのリリース業務は全員でトリプルチェックを実施したいと考えています」という意見をいったとします。

B さんが「なぜ、トリプルチェックをするのですか?」という質問により、解釈を確認したとします。
A さんは「ほぼ全員がここでミスしているからです」と答えたとします。
B さんは「ほぼ全員とは何人中何人ですか?」と事実を確認したとします。
A さんは「10人中6人」と答えたとします。
B さんは「ほぼ、というので9割ぐらいかと思っていました。6人なのですね」と反応しました。

これは事実と解釈を全て確認した場合です。仮に解釈は確認したが事実を確認しなかった場合について考えてみます。
B さんは A さんが「ほぼ全員がミスしている」という解釈をしていることを把握できました。そのため、「ほぼ全員」という内容を自分なりに解釈し、9割だろうと考えてその妥当性を判断することになります。事実としてはミスが6割であることを把握せずに判断することになります。

次に、仮に解釈も事実を確認しなかった場合について考えてみます。 B さんは A さんがどのような事実に対してどのような解釈をしたのか確認しないままこのトリプルチェックの施策が好ましいか判断することになります。ミスの増加が原因であること。それが6割であること。これらの判断基準を持たないまま結果を導くことになります。

実際は6割がミスをしている、という事実の段階でも掘り下げ不足で、そこまでたどり着いたのなら個別のミスの内容まで掘り下げることになるでしょう。その結果次第でトリプルチェックは妥当な対策となるかは不明です

解釈と認知バイアス

解釈に関してはもう一つ気をつけることがあります。解釈にはバイアスの影響が入り込みやすいのです。
例えば、 A さんが日中眠そうにしていたとして

「A はいつも遊んでいるから今回も前日夜中まで遊んでいたに決まっている」

と考えるのは決めつけの解釈であり、 認知バイアス です。
認知バイアスとは、個人の常識・価値観などによって非合理的な判断をしてしまうような事象のことを表します。

上記の例でいえば、ひょっとすると体調不良があるのかもしれません。人には早朝・昼・夜型など、睡眠特性もあると言われ、単に昼型の人のリズムに併せて生活するのが難しいのかもしれません。人の解釈は価値観や過去の経験により決めつけを行いやすくできています。
普段はこの思考のショートカットを使うことで楽に短時間に物事を判断することができます。しかし、新しい物事に取り組む場合や、難しい問題に取り組む場合、このショートカットの不正解率が上がりやすくなります。
解釈の中には認知バイアスが含まれることがあり、それをもとに意思決定を行うと本来必要な判断から大きくハズレる可能性が高まります。
例えば血液型で人の性格を決めてかかる、というのは典型的なバイアスで「 確証バイアス 」といいます。

この解釈に含まれる認知バイアスによる誤判断を防ぐためにも、事実の確認は有効になります。

事実・解釈・意見を引き出す方法

解釈質問で解釈を引き出す

解釈質問( Interpretation Question )は解釈を引き出す質問です。解釈質問という専門用語は無いのですが、後述する「事実質問」との対比で命名しました。

  • Why

などの質問によって引き出すことができます。

事実質問で事実を引き出す

事実質問( Fact Question )は事実を引き出す質問です。対話型ファシリテーション(Dialogue-based facilitation or Meta-facilitation) の用語です。

  • When
  • Where
  • Who
  • What
  • How

などの質問によって引き出すことができます。

まとめ

最近人と話していて問題構造に関してよく説明することがあります。

この図でいう、解決策やアクションに関する意見や意見を持とにした依頼のみがいきなりでてくる、という状況が仕事中多くの人にあると考えています。このとき、理想としては意見を言う側・依頼をする側が自己の解釈とその裏にある事実を共有できる人ならいいですが、毎度そうとも限りません。そのため、情報が不足していたら、自分から解釈と事実を引き出せるようになっていると役に立つだろうと考えています。
問題構造の図でいうなら、依頼者がその依頼をするにあたった問題の解釈の確認。問題の背景にある事実の確認に役立つ、ということです。

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