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Employee Experience Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

高品質な作業手順を作るために必要な要素から見えてくる業務設計者の言語化能力・ライティング能力の重要性

標準化された作業手順書のことを SOP ( Standard Operating Procedure )と呼びます。
任意のタスクを行う手順が1ステップごとに書き出され、実施者が確認しながら抜けもれなく実施するための手順書です。
SOP を高品質で作成するためのノウハウがまとめられた英書である

を読みました。

そこで語られる内容から、業務を設計し、チームや部下に何らかの指示を出す人物に求められる言語化能力・ライティング能力を重要性を感じました。
まず、書籍から学んだ「高品質な SOP を作成するために必要なノウハウ」について大枠で説明し、その上で業務設計者にとってなぜ言語化能力・ライティング能力が重要かをまとめます。

業務設計者とは?

業務のやり方を設計する人。何かしらの業務の実施手順を決める人です。
そもそも業務を誰が設計するのか、というのも意外と曖昧なもので、普段誰が業務を設計しているかあまり意識していないことも多いかもしれません。
例えば、

  1. マネージャーが任意の業務の実施方法を部下に委任した場合、業務設計者は指示を受けた部下
  2. マイクロマンジメントで細かに実施方法まできめて指示を出す場合、業務設計者はマネージャー

になります。

実施者とは?

業務設計者が設計した業務を実際に実施する人のことです。
業務設計者と実施者は同じこともあれば、異なることもあります。

高品質な SOP を作成するために必要なノウハウ

書籍では、高品質な SOP の作成のためには以下のような要素が重要とされています。

  • フォーマット - 読み手に易しい適切で一貫性のあるフォーマットで記載されているか?
  • 適切な構造 - Front / Body / End の構造
    • Front - タイトル, 目次, SOP の目的 などメタ情報的なもの
    • Body - SOP 本体の手順のステップを書き連ねたもの
    • End - 関連 SOP, 関連資料, 付録等
  • 正しい手順が記載されていること
    • 対象業務の責任者など、該当領域に詳しい人物が記載すること
    • 手順書を利用するユーザーに関して詳細に把握していること
      • ユーザーが持つ手順書の業務に関わるドメイン知識
      • ユーザーが手順で解決したいのは何か?
      • ユーザーの質の幅はどうか?低熟練度から高熟練度まで様々か?
    • 適切なタイプの SOP を選択すること
      • 意思決定があまり必要ではなく、シンプルで短い手順ならステップをただ書き連ねた SOP にする
      • 意思決定があまり必要ではなく、長い手順ならメインとサブに手順をわけた階層型の SOP にする
      • 意思決定があまり必要ではなく、長い手順で画像、動画などを用いるとよりわかりやすくなるならビジュアルの SOP にする
      • 意思決定が多く必要となるなら、フローチャート形式の SOP にする
    • 業務の実態に沿ったものであることをテストやレビューで検証する
  • ライティングスキル
    • SOP の文章が理解しやすい内容になっていること
      • 短いセンテンスの集まりになっていること
      • 専門用語・略語の利用を必要最低限にしつつ、用いる場合は定義を明示する
      • 肯定形の文章を用いる
      • 文書構造に一貫性をもたせる
      • SOP は作業の指示書であるため、各ステップは命令形で記載する

業務設計者にとって言語化能力・ライティング能力が重要な理由

ざっと上記の「高品質な SOP を作成するために必要なノウハウ」の内容を確認した際に思い出す書籍がありました。
結城浩先生の、「数学文章作法シリーズ」です。

www.hyuki.com

この本は一貫して「読者のことを考える」ということを中心に据えています。
SOP の作成に関しても同じだなと、感じました。
SOP を読みながら業務を遂行する人物(=実施者とします)のことを考える必要があります。
実施者にとって、簡単に短時間で読めるようになっていること。
実際に手を動かす際に誤認せずに実施できるようになっていること。

このためには、読書=実施者のことを考えて、業務を脳内で適切な言葉で言語化し、それを実際の SOP に書き起こす必要があります。
業務を設計するということは、それにそって実施者に想定されるアクションをとってもらう必要があるということです。
SOP までの詳細な情報を記載するケースばかりとは限りませんが、タスクの依頼をする際に、その内容は相手にとって短時間で理解可能であり、本来とってもらいたい行動を引き起こすものである必要があります。

ざっくり雑に伝えて相手側が正しく理解することを求め、理解が外れたら相手側を責める。
そんな状況を見かけた人や、体験した人は少なからずいると思います。
しかし、依頼はあくまで依頼者の頭の中にあるもので、伝わる依頼にする責任は依頼者にあります。
そういったことから、業務設計者にとって言語化能力・ライティング能力が重要であると改めて考えました。

まとめ

マネージャーが問題・課題の How を部下に委ねるにしろ、しないにしろ、その業務設計の質が成果物の質や成果物を仕上げるために必要な時間やコストに影響します。
そのため、業務を改善するためには業務設計を可視化した情報 = 手順書相当のものを確認する必要があります。
この際に、手順書を適切な言語で書き下すことができるかどうかによってこの手順をより質の高いものにできるかどうかや、実施を他者に委譲しやすいかどうかが変わります。
プログラムはミスをするとエラーが発生するか、エラーが発生しないようなものでもテストコードを用意しておけばエラーを検出することができます。
しかし、普段のコミュニケーションで用いる言葉による依頼や書き下された手順はエラーが発生したかどうか判別が難しくなります。
だからこそ、適切に言語化し、適切に記載し、期待値も可能な限りすり合わせる事が重要なのでしょう。