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Employee Experience Engineer tbpgr(てぃーびー) のブログ

実体験からくるリアリティに共感しつつ実践可能なカイゼン手法を学ぶことができる良書「カイゼン・ジャーニー」を読んだ

組織で働く人にとって大小差はあれど、不満のない組織など存在しないでしょう。
だからこそカイゼンに関するノウハウは万人にとって強い武器になります。

カイゼンしていける範囲が広いほど「当事者」として振る舞うことができる範囲が広がります。
そして、 EX「圧倒的当事者」 を手にすることになります。
自分の人生を「自分ごと」にできる範囲を広げるスキル、
それが「カイゼン」するスキルと言えるかもしれません。

与えられた環境に対して裏で不満を吐き出しつつ、実際に変化させることは諦め
「月曜日」恐怖症に陥り、嫌々働く人生を送る。

逆に、与えられた環境を変えることに対して一歩踏み出し、すこしずつ仲間を増やし、
気づけば働くことに喜びを感じ、笑顔を交換し合う仲間ができているような人生を送る。

前者から後者になるきっかけを与えてくれる書籍がカイゼンジャーニーであるように思います。

経緯

コンテキストと共感

この書籍はストーリー形式で現実の日本の開発を想定して作られており、
登場人物は著者の2人が実際に会った人々の組み合わせがベースになっているようです。
※書籍のあとがき参照

この手の「アジャイル」に関するストーリー形式の書籍だと英書の「 The Dream Team Nightmare 」が
ありますが、日本のコンテキストとは違う部分もあり、共感しにくいものがあります。
ところが、カイゼンジャーニーは日本人による日本コンテキストでのストーリーなので、
自分ごととして読むことができます。

ヴァル研究所が通った道

私は少し前に著者の一人である新井さんが所属する組織のソフトウェア開発者である
ぷぽさん 」にインタビューをしています。

ぷぽさんの所属組織は「駅すぱあと」でおなじみのヴァル研究所。
そこであったアジャイル推進への取り組み。
それを主導したのが著者の一人である。新井さんです。

私はヴァル研究所の訪問もさせていただきました。

こういった経緯から「新井さんが仲間とヴァル研究所を実際にカイゼンしてきた歴史」が
おそらくストーリーに強く影響を与えているであろう、ということが連想されます。

私は、カイゼンをその場で経験してきた当事者の話しをきき、実際の現場を見学会で目にしてきたことになります。
だからこそ、この本の内容は生々しい現実のものだと思って読むことができました。

ちなみにヴァル研究所では会社見学を受け入れているそうです。
会社単位、求職者向け個人単位、または社員個人とのつながりから、
など様々な経路(「駅すぱあ」とだけに)があるようなので、
書籍をみて気になった方は関係者やホームページで問い合わせてみるとよさそうです。

ストーリー

主人公の江島が現場への不満を元に転機をもとめて勉強会へ。
そこでの出会いをきっかけに、まずは一人で変化を起こし、
二人目を巻き込み、チーム、組織へと影響を広げていく。
そんなストーリーです。

ストーリーものということもあって、内容に踏み込みすぎると
楽しめないと思うのであっさり目の紹介にしておきます。

各所で発生するトラブルは「現実の日本の開発」で
良く見るようなものがあちこちにあります。
主人公はどう乗り越えていくのだろう?
主人公のエピソードの元になった市谷さん・新井さんも実際に
同じような経験をしたのだろう。
すごい・・・負けていられない・・。
そんな気持ちをもらえる・・・かもしれません。

以下はカイゼン・ジャーニーのオフィシャルサイトです。
登場人物のイラストや、関連イベント情報などが掲載されています。

kaizenjourney.jp

手法

ストーリーにあわせて、様々な手法や理論が紹介されています。
その中でおそらく著者の市谷さん独自の手法である「むきなおり」をピックアップします。

むきなおり

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何か新たな手法・概念を学ぶ時は Web でその源流まで辿る事が多い私は、
「むきなおり アジャイル」「向き直り アジャイル」などで検索しました。

あるべき姿との差から、今後の方向性を決めることを、特に 「むきなおり」 と名前付けしています。 ぷぽさんの予想通り独自概念なのでしょう。

ちなみになぜ源流が知りたいかというと、手法や概念はそれを作った人が
ぶつかった問題を解決するためのものであることが多いです。
そして、「本来の目的」と「本来の運用法」などが存在します。
これが伝聞を繰り返すうちに薄れたり、ズレていってしまうケースというのがあると思っています。
PDCA とか典型例だと思います。

このことが源流を調べるようにしている理由です。

話がそれました。

むきなおり、と言うのは簡単ですが、実際に見逃されがちで大切なポイントだなと思わされました。
だいたい、向き直りが必要になるようなくらい根本的な何かが変わるタイミングというのは
あわただしい時期が多いと思います。
そのため、組織はプロダクトのビジョン共有のための基礎情報が更新されず、
古い情報のまま進んでいくというのはよくありそうに思います。

特に組織のビジョンだと最初に理念を作り込んだトップの思い入れが強すぎて時代の変化とともに
現実に即してないものになっているが、誰もツッコミできずそのままに・・・というのは予想ができます。

むきなおり、大切ですね。

まとめ

私は原因と結果の連鎖が好きです。
そこで、カイゼン・ジャーニーの影響を図にしてみます。

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日本の発展にはシステム開発の現場カイゼンがかせないと思います。
システム開発の現場がカイゼンされることは、
日本の未来にとって好ましい影響があるはずです。

カイゼンの源流はトヨタ
カイゼンは日本のお家芸
日本がカイゼンされるジャーニーのはじまりです。

You カイゼン やっちゃいなよ

おっと、ネタがカイゼンを許さなそうな組織を連想させるものになってしまった

カイゼンに関する課題

主人公の江島はチームや組織の課題を解決するためにカイゼンに尽力しました。
結果としてカイゼンのスキルをもったリーダーとしての経験・実績を得ました。

一方、現実を考えると

カイゼンしたいけど、あくまで 軸足はエンジニアリング におきたい

というケースがありそうです。
心の声にするなら

「私が好ましい成果を生み出すことができるようにカイゼンしたいお気持ちはあるが、
そのために専門性強化に使える時間の比率が減り、成長が鈍化してしてしまうのは嫌だ」

という感じですね。

ある程度小規模なものは、こういった立ち位置の人でもできますが、
チームや組織を巻き込んで行く際に少なくとも誰か一人は
軸足を カイゼンリーダー に変える必要がありそうな気がしています。

私自身は、必要性があればそこに軸足をずらしてもいいかな、と思いますが
一般的に開発がしたくてソフトウェア開発者になった人には選びにくい選択肢であるように思います。
もちろんこの書籍の「カイゼン」はソフトウェア開発者に限った話では無いと思うので、
いろんな職業の人が本当に伸ばしたい分野とのステ振りの悩みが発生する、ということです。

このあたりは活動の効果を拡大する上で一つの壁になるのでは、と想像しています。

書籍

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

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