最近、「内発的動機づけを支援する」というテーマに個人的に取り組み始めました。
その過程で、そのうち「インタビュー」をやりたいなと考えており、インタビューに関わりそうな
書籍を選びたいと思っていた時にこの書籍が目に入りました。
購入後、本を買った旨をツイートしていたら訳者さんからリプライをいただきました。
Q思考、ビジョナリーカンパニー、マンガでわかる統計学入門を購入 pic.twitter.com/qggkpYD1FM
— てぃーびー (@tbpgr) 2016年8月5日
訳者です。ご購入ありがとうございます。ご読了後は是非ご感想も!@tbpgr
— Tatsuya Suzuki(鈴木立哉) (@tatsuyaakiko) 2016年8月5日
せっかくお声がけをいただいたので、感想を書こう!ということでこの記事を書いています。
ターゲット
創造的な分野に関わる人がターゲットとなっています。
原書タイトルは「 A More Beautiful Question: The Power of Inquiry to Spark Breakthrough Ideas 」です。
背景
ルールに沿って黙々と効率を上げることによって成果を上げる時代から、
変化に対応すべく次々と新しいアイデアを発想し、試行し、フィードバックループを回す。
現代の社会は後者の能力が求められる領域が増えてきています。
自ずと、求められる能力も記憶、従順さなどに比べて、
疑問、発想、柔軟性、スピードなどにシフトしてきています。
このような状況について同意する方は一定数いると思いますが、
その上で学校教育や企業の採用、教育、チーム方針などは本当にこの現実に即しているか?
と言われると耳が痛いケースもあると思います。
このような現状に「問い」を投げかける本でもあります。
この本のターゲットは「創造的な分野に関わる人」であると考えられますが、
そもそも創造的な領域が広くなっているからこそ、質問することが大事だというのが著者の意図するところでしょう。
各章要約
5章構成の本です。
章 | タイトル | 概要 |
---|---|---|
1 | 「Q」で思考にブレイクスルーを起こす | 質問の重要性。 時代背景がまとめられています |
2 | 子どものように「なぜ」と問い続ける | 小さな子どもは質問の達人です。 子どものように質問をできるようになるための方法や前提がまとめられています。 |
3 | 「美しい質問」を自分のものにする | ・なぜ? ・もし~だったら? ・どうすれば? の3ステップ(理由、仮説、方法)による質問について詳しくまとめられています。 |
4 | ビジネスに「より美しい質問」を与えよ | ビジネスのコンテキストにおける質問についてまとめられています |
5 | 「無知」を耕せ | 質問を追求することで、未知の荒野を耕していくためのポイントがまとめられています |
気になった点
いい質問の前提として必要なもの
企業が社員からいい質問を引き出すためには、質問の習熟以外にも前提があるように感じます。
- 目的・ビジョンの共有
- 質問に必要な前提情報=情報共有の基盤があること
- 変化を許容する文化であること
- 自律的に動くことができる人材がいること、そういった人材が働きやすい文化があること
自分の会社がどのような目的を持ち、その結果どんな世界を作り出そうとしているか?
いい質問をするための前提条件として、その近辺の業務関連情報をもっているか?
いい質問を受け入れ、実際に行動に移す文化になっているか?
自律的に動ける人材が揃っているか?そういった人材を受け入れる文化になっているか?
逆にいい質問ができる組織は上記のような組織になるような気もします。
鶏が先か、卵か先か分かりませんが相互に大事な要素であるように感じます。
HMW的質問
4章の ビジネスに「より美しい質問」を与えよ で取り上げられている内容です。
HMW的質問とは
How might we?
という質問のことです。
ここでは「どうすればできそうか?」と訳されています。
HMW的質問は
- How - まずは実現可能であることを前提に発想できる
- might - should や can よりも可能性を広げて発想することができる
- we? - 我々が、と付くことで自分事として参加者みんなで考えることができる
このような点を強調するためのものだと解説されています。
なぜ、このようにこだわった意味のある短い言葉をつくるのか?
つまり、質問にとって大事だと思われる3つのポイントを詰め込み、
それを 想起するための覚えやすい短いキーワード として作られたものではないかと考えました。
実際にミーティングやビジネス中の会話で発言する言葉として決められたものであることが予想され、
3つのニュアンスをすべて残しつつ日本語に落としこむのが大事そうだな 、という印象をうけました。
「どうすればできそうか?」
というのは翻訳としては正しいと思うのですが、日本語としては「 we=我々が 」のニュアンスを読み取ることができない
言葉になってしまっているので、みんなでこの言葉を実際に使おうとした時にHMWのメリットが
2/3になってしまっているように思いました。
ただ、 もし自分が訳者だったとしたら どうすればよいだろう? と考えた場合
なかなかよいアイデアが直ぐには浮かびませんでしたが。
創造的領域はフォーマルすぎるよりもカジュアルな方がアイデアが浮かびやすいのではないかな?
また、発言のための心理的な安全性が保証された場では、砕けた発言が許容されやすいのではないかな?
と個人的に思うので、現実に使うとしたらカジュアルに
うちら、どうすればできそうかな?
などでしょうか。
本の翻訳としては不適切ですが、 もし自分がHMW的質問を実際の現場で使うとしたら こんな感じの言葉にしそうです。
優秀な若者と交流する機会が多いので38歳のおっさんであるところの私ですが、
別に若者に「うちら」と言われてもカチンとはこないですね。うんうん、いいよいいよ。という気分です。
※英語が苦手な癖に翻訳に関して口出ししちゃってごめんなさい。
まとめ
私は3人の娘を持つ親なので、子育ての意味でも興味深い話題の本でした。
日本の学校教育は、質問力や創造力よりもテストでよい点をとることや知識をみにつけることに
重点を置いているように見受けられるので、こういった創造的な分野については私が直接コミュニケーションを取ることによって
伸びるきっかけを提供できたらいいな、と思います。
- 作者: ウォーレン・バーガー,鈴木立哉
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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