仕事に子育て。自分自身。モチベーションは行動の源泉力です。
一昔前は「アメとムチ」が効果的とされていましたし、現在もその視点で部下や子どもの育成に
取り組んでいる方もいると思います。
しかし、アメとムチは短期的な効果こそあれ、長期的には逆にモチベーションを削いでしまう。
長期的なモチベーションを与えるには内的動機づけを刺激する必要がある。
そういった理論を分かりやすくまとめたのが書籍「モチベーション3.0」です。
ターゲット
この書籍を読むと役立ちそうなターゲット
- 部下を持つ上司
- 仕事、コミュニティ、学校の部活などチームの生産性を上げたい人
- 組織レベルの意思決定を行う人
- 子育て中のパパ、ママ
- 自分自身のモチベーションをうまく刺激できていないと感じている人
- お客様と近い領域で仕事をしている人
要約
人間のモチベーションの歴史はモチベーション1.0からスタートします。
モチベーション1.0は生物的な生存に基づくものです。
生きるので精一杯の時代は生きること自体がモチベーションの源でした。
次にモチベーション2.0の時代が訪れます。
人間は報酬を求め、罰を嫌います。つまり、アメとムチです。
労働者を部品のようにとらえ、多くの単純労働をうまく回す上では有効なしくみであり、
この仕組は長いことモチベーション・マネジメントの中核に据えられてきました。
世の中の仕事が複雑化し、単純な労働はコンピューター等に置き換えられてくるようになってきました。
こうなってくると、人に求められるのは「人にしかできない創造性の高い仕事」です。
この領域においてモチベーション2.0は逆効果でした。
そこでモチベーション3.0の登場となるわけです。
モチベーション3.0は内的動機づけです。
内的動機づけは 自律 ・ 熟達 ・ 目的 からなります。
本書では以上のような内容について、実験結果や実例などを交えて
モチベーションに関わるあれこれを分かりやすく説明してくれています。
ピックアップ!
気になるトピックについてざっとまとめます。
アメとムチがうまくいかない理由
行為に対して褒章を与えればより多くの行動を得られ、
行為を罰すればその行為は少なくなる。
アメとムチの思想ではそう考えられてきた。
仮に「仕事」はしなくてはならないこととすれば、
「遊び」はしなくてもいいのにすることだとします。
「遊び」は自発的に行われ、ほっておいてもどんどん熱中して行われます。
ここにアメとムチの仕組みを取り入れるとどうなるのか?
生産性が上がるどころか、下がることになります。
「遊び」は、報酬によって短期的には熱心に行われるようになりますが
しなくてはならない「仕事」に変化します。
ここで、報酬が止まると・・・本来ほっておいても行われていた「遊び」は
行われなくなってしまったり、頻度が下がってしまいます。
創造的な「遊び」は消化すべき作業になってしまいました。
様々な実験の結果、創造的な領域において
アメとムチを与えた場合、何も与えない場合よりも長期的な成果は下がることが分かったそうです。
タイプIとタイプX
タイプI(タイプアイ)
Intrinsic(内発的)。モチベーション3.0の根底にある考え。
タイプIは自主性、やりがい、目的などを動機づけとしている。
そしてタイプIには以下のような特徴があると考えられている。
- タイプIの特徴は後天的に作ることができる
- タイプIはほとんどの場合タイプXを凌ぐ成果を出す
- タイプIは外的報酬を軽視しているわけではない
- タイプIの行動は持続可能、タイプXのような単発のものと較べて長期効果が高い
- タイプIの行動は肉体・精神を満足させる
よくありがちなのは「やりがい」をアピールしているが、報酬が伴わない仕事などがありますね。
タイプIが効果を発揮するにはあくまでも、その仕事の価値相当の給与や
公平性のある報酬が必要となります。
例えばいくら世の中の役に立つ仕事で、自分が心からやりたいことと重なっていても
家族を養って行けないような仕事ではモチベーションを保つことはできませんし、
自分よりも全然働いていなかったり、成果を出していない人が自分よりも多くの報酬を受け取っていれば
不公平感から不満が噴出するでしょう。
タイプX(タイプエックス)
Extrinsic(外発的)。モチベーション2.0の根底にある考え。
タイプXは外的な報酬を動機づけとしている。
モチベーション3.0の3つの要素
自律性(Autonomy)
人にしかできない創造性の高い仕事は型にハマりません。
がんじがらめの制約や人を部品とみなすような環境から創造性は生み出されません。
部品ではなくプレイヤーとして認められ、
自由と裁量を与えられ、
持ち前の好奇心を存分に発揮し、自発的に行動する。
このような自律性が確保されるほど、人は創造性を発揮します。
自律の対象には4つのTがあるとされています
- Task
課題の自由。どんな課題に取り組むか自発的に選択可能である。
Googleの 20 % ルールや、アトラシアンのフェデックス・デーなどが顕著な例。
- Time
時間報酬からの自由。
時間報酬は時間を書けるほど報酬を貰えるため
本来は短時間でより高い成果を出したほうが価値があるはずが、
わざと長く引き伸ばした方が成果がでる、というおかしな自体に陥ります。
低い成果で残業して「いかにもがんばっている姿をみせる」ことよりも、
未時間時間で求められる成果をきっちりだして、残った時間を趣味や家族の時間として
有効に活用するほうが望ましいにも関わらず、
組織によっては前者の人材を評価し、後者の人材を評価しない場合があります。
時間ではなく成果が重要なのです。
- Technique
手法の自由。
仕事のやり方に自主性を重んじるとよりよい成果を生み出しやすくなります。
裁量を大きく認めた組織では従業員満足度もあがり、離職者が減り、採用の際の希望者も増える傾向にあります。
- Team
チームの自由。
誰と働くか?それは労働者にとって非常に大きなモチベーションです。
多くの人が尊敬できる人、優秀な人、楽しい人、共感できる人と働きたいと考えるでしょう。
おそらく日本の多くの企業では働く仲間を選べないケースが多いでしょう。
逆に自分が一緒に働くメンバーを選べるなら?
主業務ではチームの自由度がやや低くても、20%ルールのようなシステムで
もとめる仲間と一緒に活動できるとしたら?
その組織はとても魅力的に映るのではないでしょうか。
熟達(Mastery)
複雑な問題を解決するには積極的な姿勢と探究心が必要です。
人には物事に習熟したい、より良く行いたいという熟達へのモチベーションがあります。
これを支援するためには、モチベーション2.0が掲げるようなアメとムチによって従順さを求めるよりも
積極的な関与を支援する仕組みを用意する必要があります。
遊びの中には「自己目的的」という状態がある、と心理学者チクセントミハイは考えました。
行うこと自体が目的になっている状態です。
一流の芸術家、スポーツ選手など何かに打ち込み大きな成果を生み出す人は自己目的的です。
そしてチクセントミハイは「自己目的的」というちょっと分かりにくい言葉を「フロー(flow)」という言葉に置き換えました。
さて、フローを生み出すにはどのような仕事が必要でしょうか?
各自が自発的に上達したいと願う領域で、今できることよりもやや難易度の高い仕事。
「ゴルディロックスの仕事」と呼ばれるこのような仕事を継続して与えることがフローを生み出します。
難しすぎて不安にならず、簡単すぎて退屈にならない。そんな仕事が好ましいです。
ゲームはこの仕組みを上手く利用しています。
少しずつ難しくなる課題をクリアし続けているうちに、気づくと時間を忘れて没頭しています。
こういったゲームの特性故に、ゲームシステムで活用している有効な仕組みを
現実世界に活かす「ゲーミフィケーション」が注目を浴びているのでしょう。
目的(Purpose)
自律した行動、熟達への熱意にはその先にある夢・目的が必要です。
今年は夢・目的について多くのことを考えてきました。
以下の書籍の書評などにざっとまとめてあります。
没頭しフローに入るには、そもそも熟達したい目的があるはずです。
大きく輝いた夢や目的があるからこそ熟達を求めるわけです。
自律して動くのも自分の夢や目的という確固たるものがあればこそです。
もちろんこういった明確な夢や目的がなくても動ける人もいますが、
そういった人も夢や目的ができればより一層成果を出せるようになるでしょうし、
本人もそう感じているでしょう。
輝くゴールのある道をひた走る。
どこに続いているのか、どこを目指しているのかわからないままひた走る。
どちらが楽しく、集中して、自発的に走り続けられるか?
まとめ
モチベーション3.0はいいぞ。
さておき、もっと詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください♪
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)
- 作者: ダニエル・ピンク,大前研一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/11/20
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